封切り四日目。
席数118の【シアター3】の入りは四割ほど。
素封家の一人息子と結婚し
可愛い娘も授かり傍目には何の不満も無いように見える『塔子(夏帆)』。
しかし心の奥底には、得も言われぬ小さな不満の数々が
澱のようにわだかまっている。
そんな折、結婚前まで愛人関係にあった『明彦(妻夫木聡)』とばったり遭遇、
焼け木杭には火が付いたように、再び情欲の世界に堕ちて行く。
と、ざっと筋を追うと、あまりにありがちな設定。
それを補うためか、
家庭や職場内での女性の役割の不平等さとか、
親子や嫁姑の関係性とか、
昨今も頻繁に取り上げられる話題をまぶしてはいるものの
取って付けたよう。
また、愛欲に耽っている時は
周囲が見えなくなるものだとはいっても、
傍にいる人間が二人の関係性を直ぐに察知できてしまうほど見え見えなのも、
いい歳をした大人の言動から外れている。
ことほど左様に、瑕疵を挙げて行けばきりがない。
じゃあ肝心の、「R15+」の元となる濡れ場は?と聞かれれば
これが輪を掛けた残念さ。
〔ピンクとグレー〕同様、おっぱいが見えるわけでもなし、
一番の問題はそのシーンに全くエロさを感じないことで、
観ていて興奮の欠片すら浮かんで来ない。
が、もっとも残念なのは、主人公の考え方にどうにも共感できないことで、
愛娘への態度を除いては、夫の『真(間宮祥太朗)』にしろ、
実母の『陽子(余貴美子)』にしろ
見えない壁を隔てて向き合うような
何処か人を突き放したような態度がその背景にありそう。
『塔子』が感じている不満や不安が漠然としか伝わって来ず、
感情移入しきれない描写に終始していることが要因か。
評価は、☆五点満点で☆☆☆。
結局、最後の最後まで、主人公の言動がどうにも納得できず
物語りの世界に没入できない。
もっともそれは自分が男だからで、観客の大部分を〆た中高年の女性達には、
また異なる見え方をしていたんだろうか。