RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ドリームプラン@TOHOシネマズ日比谷 2022年2月23日(水)

本日初日。

席数489の【SCREEN12】の入りは七割ほど。

 

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原題は〔King Richard〕。

本編を観終われば、
その皮肉な響きは理解されようも、
おそらくは『シェイクスピア』の戯曲〔King Richard III〕を
もじったものと思われ。

先の王は「脊椎側彎症」との容姿上の特徴もあり、
性格が残虐になったとの(創作上の)設定も、
本作の王である『リチャード・ウィリアムズ(ウィル・スミス)』は
黒人として生まれたこと、
そして家が貧しかったことがバックボーンで、
それを見返すことに執心した結果が、
二人の娘(五人姉妹のうち)の世界的な名声に結び付く。

とは言え、本来的には自身の栄達をこそ求めるべきで
それを子供たちに仮託するスタンスは、
かなりの捻じれを感じてしまう。

どんな仕事も長続きしなかったとのキャラクターを
いみじくも妻からなじられるシーンもあり。


劇中に頻出する、彼の所謂「プラン」は、傍から見れば
何の根拠も無いもの。

一歩間違えば誇大妄想狂、或いは
昔の{スポ根}モノに出て来たアブナイ親父の一歩手前にしか思えず。

家庭内での振る舞いや、
テニス界を、更にマスコミをも振り回す傍若無人な態度は、
才能のある(かもしれない)娘たちを無条件に引き立てるのは
社会として当たり前との都合の良すぎる思いによるもの。

ひいては先に挙げた意趣返しや、豪奢な生活の憧憬も透けて見え。

『ビーナス』と『セリーナ』の成功が有ったからこそ
許容はされたものの、
確率的には万に一つの僥倖だったのではないか。


しかし、そうした父親の態度を
劇中では否定も肯定もしないスタンスで描いている。

先妻との間の子供に対する冷たい態度も
さらっと流される程度にしか言及されず。

鑑賞する側からすれば、娘たちの成功は応援したくあるものの、
主人公の鼻持ちならない態度に共感をすることはかなり困難。

スポーツと教育は両立させるべき、とか
成功者は社会貢献をすべき等の信念の部分は
ごもっともと頷きはするのだが。

エンドロールと共に流される
実際の映像を見ても、諸手を挙げ感心する気持ちには
なかなかなれず。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


主演の『ウィル・スミス』は製作にも名を連ね、
本作には並々ならぬ意欲を見せている。

実際、「アカデミー主演男優賞」にもノミネートされているし。

特殊メイクで容貌を変え、やや猫背の姿勢も
『リチャード』を正確に模倣していると思われるが、
実在は果たして、そこまで魅力のある人物なのだろうか、と
かなりの猜疑の目で見てしまう。