本日初日。
席数489の【SCREEN12】の入りは七割ほど。
原題は〔King Richard〕。
本編を観終われば、
その皮肉な響きは理解されようも、
おそらくは『シェイクスピア』の戯曲〔King Richard III〕を
もじったものと思われ。
先の王は「脊椎側彎症」との容姿上の特徴もあり、
性格が残虐になったとの(創作上の)設定も、
本作の王である『リチャード・ウィリアムズ(ウィル・スミス)』は
黒人として生まれたこと、
そして家が貧しかったことがバックボーンで、
それを見返すことに執心した結果が、
二人の娘(五人姉妹のうち)の世界的な名声に結び付く。
とは言え、本来的には自身の栄達をこそ求めるべきで
それを子供たちに仮託するスタンスは、
かなりの捻じれを感じてしまう。
どんな仕事も長続きしなかったとのキャラクターを
いみじくも妻からなじられるシーンもあり。
劇中に頻出する、彼の所謂「プラン」は、傍から見れば
何の根拠も無いもの。
一歩間違えば誇大妄想狂、或いは
昔の{スポ根}モノに出て来たアブナイ親父の一歩手前にしか思えず。
家庭内での振る舞いや、
テニス界を、更にマスコミをも振り回す傍若無人な態度は、
才能のある(かもしれない)娘たちを無条件に引き立てるのは
社会として当たり前との都合の良すぎる思いによるもの。
ひいては先に挙げた意趣返しや、豪奢な生活の憧憬も透けて見え。
『ビーナス』と『セリーナ』の成功が有ったからこそ
許容はされたものの、
確率的には万に一つの僥倖だったのではないか。
しかし、そうした父親の態度を
劇中では否定も肯定もしないスタンスで描いている。
先妻との間の子供に対する冷たい態度も
さらっと流される程度にしか言及されず。
鑑賞する側からすれば、娘たちの成功は応援したくあるものの、
主人公の鼻持ちならない態度に共感をすることはかなり困難。
スポーツと教育は両立させるべき、とか
成功者は社会貢献をすべき等の信念の部分は
ごもっともと頷きはするのだが。
エンドロールと共に流される
実際の映像を見ても、諸手を挙げ感心する気持ちには
なかなかなれず。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
主演の『ウィル・スミス』は製作にも名を連ね、
本作には並々ならぬ意欲を見せている。
実際、「アカデミー主演男優賞」にもノミネートされているし。
特殊メイクで容貌を変え、やや猫背の姿勢も
『リチャード』を正確に模倣していると思われるが、
実在は果たして、そこまで魅力のある人物なのだろうか、と
かなりの猜疑の目で見てしまう。