封切り二日目。
席数158の【SCREEN3】は一席おきの案内なので
実質80席。
入りはその三割ほど。
もう三十年も前に出版された
『吉本ばなな』の〔キッチン〕。
話題作だったこともあり
(なんといっても『吉本隆明』の娘のデビュー作)、直ぐに読了、
今でもうっすらと流れは記憶に残るも、
同短編集に所収されているという本作の原作はとんと覚えておらず。
もっとも前者は1989年に『森田芳光』の監督/脚本で映画化されているので、
その思いも影響しているのかもしれない。
一組の兄弟とその恋人たち。
親しく交わる四人だが、兄と弟の恋人が突然に亡くなってしまう。
残された二人はその喪失感を埋め、再生できるのか、が
テーマとなっているも、それ自体は既に手垢の付いたモチーフ。
「月影」の都市伝説と合わせ、夢とも現とも付かぬ世界が展開、
更にはそれに優しい怪異がまぶされ、物語は緩やかに終焉する。
その都市伝説もどきも、どうにもありきたりで
新奇さは見られず。
元々は短編を九十分強の尺に引き延ばしているため、
ぱっと見不要と思われるシーンが頻出。
中にはきちっと回収されるエピソードはあるものの、
とりわけ「ピタゴラスイッチ」風の装置を総出で創る場面は、
各人の個性を紹介するでもなく、
漫然と時間の帳尻を合わせるための挿話にも見え、
何をか言わんや。
全体的に散文的な造り。
カメラは美しく、音の拾い方も巧いものの、
コンセプトが近似したPVを繋げて見せられているようで、
どうにも纏まりに欠ける。
もっとも『小松菜奈』がほぼほぼ
出ずっぱりなので、鑑賞を決めた幾つかの要素の一つは
十分に満たされはした。
評価は、☆五点満点で☆☆☆。
〔Moonlight Shadow〕で思い出すのは
1983年にリリースされた『マイク・オールドフィールド』の楽曲。
殺害された恋人に、自身の死後
天国で邂逅することを祈る歌詞の内容だけど、
こちらとのハイブリッドとの印象も受けるが。