RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

バジュランギおじさんと、小さな迷子@109シネマズ木場 2019年1月19日(土)

封切り二日目。

席数111の【シアター8】はほぼほぼ満員。


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パキスタンの山奥で牧畜を生業とする両親の元に生まれた『シャヒーダー』は
六歳になっても言葉を発することができない。

土地の古老の助言に従い国境を越え、願い事が叶うと言われているインドの廟に詣でた帰り道
母親とはぐれ迷子になってしまう。

彷徨ううちに『バジュランギ』に出会い、その厄介になるのだが、
この主人公が無類のお人好し、或いは馬鹿正直、又は頭の螺子が一本外れてる?
『シャヒーダー』を故国に送り帰すのに奔走する。

しかし情勢の悪化により、それが実現できないとなった時に
彼は自身で彼女を送り届ける決心をする。


ここまでが前半部、160分の長尺の半分を使い描写する。

おそらく本国の公開時にはここでインターミッションが入るのだろう。

そして例によって本邦では幾つかのシーンがカットされていると思われる。


広範はうって変わってロードームービー。

過去の例に倣い、苦難の連続の中にも笑いを盛り込むことを忘れない。

『バジュランギ』の真心に感化された多くの人の助けを受けて
果たして彼は『シャヒーダー』を無事に両親に渡すことができるのか?


ある種、ベタな造りの一本。
その直情的で扇情的な流れは{韓流ドラマ}にも相通ずるものがある。
中毒者が続出の理由だが{マサラムービー}でもそれは同様だろう。

唐突に始まるミュージカルシーン。
ここ一番の時に人物をド~ンとアップにするカメラワーク。
笑わせて、義憤を感じさせて、泣かせる、山あり谷ありの流れの妙味、
などなど。

また登場人物の何気ない仕草や行動、或いはダンスシーン、
だらだらと語られる『バジュランギ』の過去でさえ
キチンと伏線として機能していることがあとあと判って来る。

脚本も上々な出来。


そして本編を通して語られるのは、国家や宗教の持つ偏狭な側面が
多くの人を不幸にしている可能性のある事実。

第二次大戦後間もない頃のパキスタン分離独立が
いまだに両国の確執として続いており、
往時を知る人だけでなく、イマドキの若者にさえその影を落としている国家間の相克。

(飲食の禁忌の問題はさておき)本来は人々を幸福に導く為の宗教が、
それ以外を異教として排除することで信者の心根まで閉鎖的にしてしまう窮屈さ。

それよりも、一人の幼女を幸せにしたいとの優しさを多くの人が共有することの方が
もっともっと世界を愛情で満たすのだと高らかに歌い上げる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


新春早々、心が震える一本を観た。

上映を決断した配給・興行サイドにも拍手を送りたい。