RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

どん底作家の人生に幸あれ!@TOHOシネマズ川崎  2021年1月23日(土)

封切り二日目。

席数158の【SCREEN3】の入りは三割ほど。

f:id:jyn1:20210125072329j:plain


原作未読も複数回映画化されていることは認識。

作者の前半生が反映されているとされる物語りは
それほど蠱惑的なのだろう。


しかし、本作、観始めて早々に感じる違和感。

1800年代の英国が舞台であるハズなのに
主人公をインド人が演じていたり、
黒人が上流階級の貴婦人として登場したり、
その息子が生粋の白人であったり。

どうやら肌の色や髪の色は、全く指標にはならず。
外見はとっぱずして見てくれ、とのことらしい。


かなりの長編を二時間弱に纏めているので
物語りはとんとんとテンポ良く進み、
さながら抄訳を味わうよう。

脚本は勿論のこと、編集にも工夫が凝らされ、
殊に外連味のある表現は評価。

多様な登場人物もキャラが立っており、
アップダウンの激しい半生は観ていて全く飽きない。

キャッチーな性格付けではあるものの
一方で個々人の掘り下げは浅く、感情移入ができにくいのは残念。


また、〔マイ・フェア・レディ〕でも扱われたヒックニー訛りを絡めた描写は
異国の我々には判り難い等を右代表とし、文化に疎い鑑賞者には
隔靴掻痒の部分が多いのも、宿命とは言え辛い。

字幕を付けた『松浦美奈』はそれなりに工夫をしているようだけど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


主人公の名前は以前には『カッパーフィールド』と教わった記憶だけれど
ここでは『コパフィールド』で統一されている。

でも実際の発音を聞くと、前者により近い印象なのだが。


そして名前と言えば『ユライア・ヒープ』。

イギリスのロックバンドのそれは
ここから採られていたのね。今回初めて知ったよ。

さんかく窓の外側は夜@TOHOシネマズ川崎  2021年1月23日(土)

封切り二日目。

席数147の【SCREEN2】の入りは四割ほど。

もっとも今日は、舞台挨拶の生中継が予定されているので、
主演クラスのファンの人達は、そちらの回に行くのだろうが。

f:id:jyn1:20210124095944j:plain

夏目友人帳〕でも描かれる、所謂
「視える」人間の悲哀。

当該人である『三角』の常に怯えているようなおどおどした性格は
幼い頃からの能力の帰結か。
『志尊淳』がうまみたっぷりに演じる。

そんな彼を
対極に在る「払える」男『冷川(岡田将生)』が助手として雇う。
ぼうとしか視えなかった霊が、『三角』に触れることで
よりはっきりと認識できるとの理由で。

ただ一連のシークエンスはBLっぽい要素も入っており、
一部好事家には狂喜の要素(笑)。


『非浦英莉可(平手友梨奈)』は「呪える」女として登場、
先の二人に絡んで来る。

そしてもう一人、「信じない」男『半澤(滝藤賢一)』の存在が頗るユニーク。
有り勝ちなサスペンス作品の設定だと真っ先に餌食になってしまうのに、
信じぬことが強みになるとの斬新な設定。


百分程度の尺は、主要な三人の馴れ初めから幼い頃の体験を引きながら
謎とも言えぬ事件が解決されるまでを描く。

結果として、過去のトラウマの要因は明らかになるのだが
それはそのまま明るい未来に繋がるのか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


望まぬ能力の為に置かれたしまった、三者三様の今の境遇の描写が平板、
且つ既視感もありまくり。

とりわけ『英莉可』の立ち位置は謎のままで、
最初から続編の制作を前提に作られた一篇じゃないかと。

要はイントロダクション的な位置付け。
一本の作品ととして見た時にはあまりにも不完全で
どうにもフラストレーションが溜まる。

そして、あなたの視点@資生堂ギャラリー 2021年1月16日(土)

たぶん本展からだろう、当該館が事前予約制でなくなったのは。

それでも入場時には検温と手指の消毒。

館内はさほどの入場者になっていないのは有り難い、
本日初日だけれどね。

f:id:jyn1:20210123073105j:plain


会期も~4月18日(日)と長めに取られているのは、
コロナ禍での不測の事態を勘案してるのかもと思ってみたり。

 館内には計五名の
何れも女性作家の作品が並ぶ。


中でも鮮烈なのはやはり『片山真理』の{写真}は。

多くの場所で既見ではあるものの、
四肢のうち三つに障碍があるカラダ、
それ自体をモチーフにする発想がぶっ飛んでいる。

しかし、それらは何れも内に閉じてはいない、
外に広がり繋がろうてして様に見えることが
単純な希望ではない明るさを感じてしまう。


『アネケ・ヒーマン&クミ・ヒロイ 』の作品だが、
同時期に「ggg」で開催されている”石岡瑛子 展”と共通の素材を扱っていることに
思わずニヤリとする。

これってシンクロニシティ

 

アネックス展2021–主体と客体–@ポーラ ミュージアム アネックス 2021年1月16日(土)

標題館の事前予約制は変わらず。
入場前には検温と手指消毒。

館内は三々五々の来場者、
密にはなっておらず。

f:id:jyn1:20210122080344j:plain


計四名の作品が並び
入り口近くの『伊佐治雄悟』のそれに目が留まる。

プラスチック製の既製品の容器を熱で変形させたのか、
ところどころ半円形にぽこぽこと盛り上がっている。

いやいや、カラダにできた水疱を思い出し、
なんだか全身がむず痒くなって来る。


『脇田常司』の{写真}はまるっきり{油彩}のようなタッチ。

小品乍ら、女性がモチーフの二枚は面立ちが好ましい。
加えて鮮やかな花が咲き乱れる庭をとらえた一枚、
ゴッホ』の〔ドービニーの庭〕を思い出してしまった。


会期は~2月7日(日)まで。

SURVIVE-EIKO ISHIOKA/石岡瑛子@ギンザ・グラフィック・ギャラリー 2021年1月16日(土)

前後期に分かれ、
前期は~1月23日(土)まで、
後期は2月3日(水)~3月19日(金)。

グラフィックデザインはサバイブできるか」との副題は共通も、
夫々「広告・キャンペーン」「グラフィック・アート」とテーマは違えてある。

f:id:jyn1:20210121080035j:plain


で、たぶん、広告を代表する一枚のポスター、
前田美波里』を起用した「資生堂」のそれは
イマイマ見てもインパクト十分。

もっとも1966年にこれを見た時は、
自分もガキだったからその良さがまるっきり判らず、
やはりある程度歳を取ってからでないと駄目なことってあるよね。


パルコのポスターも同様で。

こちらは自分の青春期とほぼ同時なので
色んな記憶も甦って来るのだが、今だったら
街頭には貼れないんじゃないかって思ったり。


予告を確認すると後期は映画や演劇のポスターが並ぶそうで
今から楽しみで仕方ない。

 

伊奈英次写真展:残滓の結晶@キヤノンギャラリーS 2021年1月16日(土)

f:id:jyn1:20210120081843j:plain
英文タイトルの「CRYSTAL OF DEBRIS」を見ると
宇宙ゴミ」を発想してしまうのは
直近のニュースでも多く取り上げられているからか(笑)。

作品自体は{写真}ではあるものの、技法はイマっぽく
デジタル技術を使った加工が施されたもの。


「東京駅」やその周辺、
アサヒビール」のビル、
東京国際フォーラム」等の普段見慣れた光景も
トリミングされ、多層に重ねられると、
また違った趣に感じるのは面白い。


でも頭の片隅で、以前に似たような情景をどこかで見たなと引っ掛かり、
ああそうだ『クリストファー・ノーラン』の〔インセプション〕だったと思い出す。

夢の中で、空と地平の境界が混沌とする情景は
全ての画面が構造物で覆われた空間に相似。

忙しなさと共に、全てのピースがピタッと嵌ったような充足感も
不思議に感じたり。


会期は~2月3日(水)まで。


椿、咲く。@UNPEL GALLERY(アンペルギャラリー) 2021年1月16日(土)

時節柄とは思われるも「LIXIL」の様にギャラリーを閉めるところもあれば、
標題館の様に新たに開設するところもある。

場所は【日本橋高島屋】裏手。

【あいおいニッセイ同和損保八重洲ビル1F 】。

f:id:jyn1:20210119074954j:plain
東京駅からも歩いて直ぐなのは有り難い。


「初々しさを秘めた成熟に向けて」
「オープン記念展」とも添えられ。

 会期は前後期に分かれ、前半が短いこともあり行けずじまいも、
後期は1月8日(金)~24日(日)なので、余裕で訪問。


入館時には検温と手指の消毒、更には
来館証への記入も求められる。


中に入ると、思いの外狭い空間。

周囲の壁には絵画類、向こう正面のウインドウ内には屏風、
中央のケースには工芸品と計十八点ほどが並ぶ。

もっとも古いものでは『(伝)山楽』の屏風、
新しいものでは『古径』の絵と、時代も人選も広範。

工芸品では『光琳』の硯箱、『乾山』の角皿と
おおよそ今回展のテーマに沿った作品群が目を楽しませてくれる。


日曜日も開館しているようだし、
今後もコンスタントに企画をして欲しいもの。