RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

祈りの幕が下りる時@チネチッタ川崎 2018年1月27日(土)

本日初日。

席数407の【CINE11】の入りは七割ほど。


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ストーリーの大きな縦糸として親子の愛情があり、
シリーズの主人公『加賀(阿部寛)』と
本作の登場人物である『浅居博美(松嶋菜々子)』の
夫々の親子関係が横糸を織り成す。

しかし、どちらもそれ単体で生地を貫くのではなく
複雑に絡み合うことで物語りに深みを与えている。

そして特に後者の方は
砂の器〕を想起させる内容であり、
制作者サイドもそれを意識してのコトだろう
コラージュっぽいカットも幾つか借用される。


葛飾区のアパートの一室で女性の腐乱死体が発見される。

時を同じくして、同区内の河川敷で男性の焼死体も発見される。

最初は無関係と思われた二つの事件が繋がっていることは
直ぐにも明らかにされるのだが、この時点よりも前に我々は
同じ作者の別の作品との類似性に気付かされる。

それは有り体に言ってしまえば〔容疑者Xの献身〕。

似た様な仕掛けが用意されているんだろうな、と
一種セルフオマージュかい、と
興を削がれたような気になっても、実は以降が本作の本領発揮。

重厚な人間ドラマがずどんと展開され、
観客はぐいぐいとお話しの中に引き込まれて行く。


前作でちょいとだけ触れられた『加賀』の親子関係、
そして自身の出世を放り出しても【日本橋】の地に拘る理由が明らかにされ、
しかしより胸を締め付けられるのは『浅居博美』の親子関係。

主要な登場人物に他作品であればピンで立てる役者を起用して厚みを出し、
わけても『松嶋菜々子』の演技が凄まじい。

その内容ゆえ、
アップが多用される画面構成に一歩も引かず渡り合い、
特にある場面での鬼気迫る表情は
観ている側の背筋がぞっとするほど。

ただ一方で、深い悲しみさえ内包したそのシーンは
劇中でも出色の場面となっている


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


テロップを多用した語り口も
映画自体に独特のリズム感を与え、
造り込みの側面でもスキルは十分に高い。

総じて見れば、同じ作者の映画化作品としては
文中に挙げた〔容疑者Xの献身〕に次ぐ渾身の出来。

そう言えば先の作品も
「愛情」を題に取ったモノだった。


エンドロールも見逃せない。

日本橋周辺の老舗やメルクマークがたっぷり映ると共に
意外な人がちょこっとだけカメオ出演

でもこの二人、このシリーズには
出演してないよねぇ。