RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

心が叫びたがってるんだ。@チネチッタ川崎 2017年7月23日(日)

封切り二日目。

席数191の【CINE10】の入りは五割ほど。


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本作の主人公は、幼少期の出来事がトラウマになり
話したくても言葉を出せなくなってしまった少女。

冒頭、そうなったいきさつをさらっと一気に見せ切った
制作者サイドの技量には感心しきり。、
唯一の瑕疵は、トラウマの原因となった
大人の側の理屈があまりにも子供じみていることくらいか。


高校生×演劇と来れば、青春モノの王道そのもの。
泣きの場面や笑いは勿論、胸がきゅんとなるエピソードまで
もうてんこ盛りに詰め込まれている。

やや違和感を感じるとしたら、
無意識的な悪役すら存在しないことで、
先のオープニングの場面を除けば、
皆が皆善意のヒトばかりなのは、
ちょっと物足りなさが残るけど。


それよりも何よりも、
本作の主役は実は「言葉」であり、
もう「言霊」と表現して良いくらい
言葉が持つ意味や重さ、或いは二重性が
とことんこだわり抜かれ表現されている。

各種のエピソードや出来事は
実はそれを取り巻く仕掛けにしか過ぎない。

主人公が声を取り戻すことができるだろうか、との
サスペンスも勿論、そのピースの一つ。

なので観客の側は、
イマイマ口から出て来た一連の発話を
あっさりと聞き流してしまうのではなく、
実体はどの様なものであったかを逐次反芻をすることで、
また異なる側面が見えてきたりする。

それは、劇中演じられるミュージカルの最後の場面に顕著で、
絶望と希望が奇妙に同衾するシーンこそが、
やはり本作の白眉であり見せ所。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


よくよく考えてみれば
芳根京子』が〔べっぴんさん〕で主人公を演じていたのはまだ十代で、
それであの老け役までやりきったのだから大したもの。

一方、本作では、妙にぎくしゃくした動きを見せたりするわけだが、
実はアニメの姿態をそのまま実写に移し替える意図的な試みだとしたら、
それも大層なコトだと思う。