RollingStoneGathersNoMoss文化部

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シン・ゴジラ@TOHOシネマズ新宿 2016年8月11日(木)

封切り二週目。

席数499と当該シネコン最大の【SCREEN9】は
満員の盛況。

もっとも、夏休みとあって
それ以外の作品も、お子様向けを中心に
軒並み満席。

標題作にしたって、幼い子供連れのお父さんがちらほら。
だけれども、本作に限っては、それが妥当だったかどうか。

子供達は『ゴジラ』が出て来る場面では
目を輝かせるけど、それ以外ではからっきし興味を失うんでね。

オマケに今回は『ゴジラ』が画面に居る時間は
(意図的に)極めて過少、殆どのシーンは
会議に費やされているんだから。


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それでも本編ではイマイマの日本の姿を忠実に描写。
希望と絶望を併存させながら
将来への警鐘もきちんと鳴らす習作。

要は”ゴジラ映画”の皮を被った、
実態は優れて上質な社会派作品になっている。


その二重性は
冒頭の「東宝マーク」が二度出てくることからも明らか。

或いは
総監督『庵野秀明』、
監督・特技監督樋口真嗣
の布陣にしてもそう。



それにしても、ここでの『庵野』さんは
やりたい放題。


新たな人物登場の度毎に
(その時の)肩書きや氏名が太明朝のテロップで表示されるが
何れもほんの一瞬。
加えて膨大な人数分を繰り返すのだから
読み取ることさえ、または記憶することさえ、殆ど不可能。

会議体の名称や作戦名が提示される時も同様。
ある作戦名などはとても長ったらしく、
その短縮形について登場人物自身が揶揄するような科白もあり。

要は最初から、記憶や識別目的の為に出しているのではない
ということ。

加えて、極端に早口の科白回し。
時として聞き取れぬこともあり、
全てを含め、その場の空気が感じ取れれば良いとの
極めてドライな割り切りに見える。


それらを通して描かれるのは、
論点のずれた長時間の会議、
責任の所在が曖昧な判断、
一つの指令が履行されるまでのまだるっこしいほどの数段階に渡る伝達ルート。

どれもこれも、我々が毛嫌いするところの官僚的な
行為の数々。

にもかかわらず、結果的には何とかなってしまうところが恐ろしい
(よしんばそれが、影に有る、オタクや外れモノ達の
縁の下のチカラであったとしても)。
ある意味日本的なものが皮相な眼差しで語られる。


しかし物語り全体を貫くリアルさは、手続きや法令関連は勿論のこと
危機管理や会議体の場面でさえ、
綿密に取材を重ねたのだろう
妙な迫真性を持って描かれ、ある意味偏執的。


音楽にしても〔新世紀エヴァンゲリオン〕を使ったかと思えば
伊福部昭』による、複数の〔ゴジラシリーズ〕からのものを
組み合わせ効果的に使用。

過去作へのリスペクトの面でも十二分に過ぎるほど。


モノ造りの面でも、日本の底力を見せる描写もあり
妙に誇らしさをくすぐったり、
一方で、未曾有の大災害が起きた時には
現状抱え込んでいる膨大な額の国債
さらに大きな負の遺産に変換するなどは
妙に示唆的だったり。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。


これだけ大風呂敷を広げておいて
本当に収斂するのか、との心配をよそに、
最後はあっけらかんと納得感のある落としどころと、
パンドラの箱」のように幾つかの希望を提示する。

象徴的ではあるけれど、繰り返し
この国を襲う超自然的な厄災の
メタファーにさえ見える。