RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

マイスモールランド@チネチッタ川崎 2022年5月7日(土)

封切り二日目。

席数191の【CINE10】の入りは三割ほど。

 

 

当然、そのことに異は唱えない。
人道に則る行為なのだから
大いに広げて行けば良い。

直近でウクライナからの避難民については
入国の条件を大幅に緩和。
現時点ではや千人近くにもなると言う。

時として政府専用機にも同乗を許可しているし。

日本国内に縁者が居なくても可能な限り受け入れをし、
居住・生活・就労・就学の支援に加え
給付金も出る、と。


翻って、本作の主人公たるクルド難民の場合はどうだろう。

詳細は語られている通りなのだが、彼我の差はどこに在りや。

迫害のされ方が異なるから?
戦火に追われたわけではないから?
肌の色が褐色だから?
英語を話せないから?
国をもたないから?
キリスト教者じゃないから?
閉鎖的なコミュニティを作るから?

故国へ戻れば命の危険があり
世界的に注目されている問題なのも共通、
なのに両者の間にはなぜか違いが生まれる。

片や入国管理局に収監されるケースもあり。
同所では、直近で不法残留の疑いで収容されていたスリランカ女性が亡くなったのは
記憶に新しい。

勤労意欲もあるのだから、
上手く折り合いを付けることはできないのだろうか。

外国人技能実習制度でもそうだが、
この国の国外からの人の受け入れ体制は、
どこかいびつ。


本作はそうした溢れ出る矛盾を、
高校二年生の少女の日常に仮託し描き出す。

突然に在留資格を失ったことで激変する生活。
破れてしまう将来への希望。

官の思惑一つでそれなりに幸せだった日々が
脆くも崩れて行く。

勿論、周囲は皆々善意の人ばかり。可能な限りで手を差し出すのだが、
それでも、この国の中で生きるつてを失った家族に対し
できることは少ない。


ドキュメンタリータッチでみせる手法もあろうが
監督の『川和田恵真』は異なる選択を。

多くの取材に基づき、一つの物語りとして
イマイマある矛盾を観客の前に提示。

あくまでも、小さな、しかし印象的なエピソードを積み重ねることで
詳らかにして行く。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


しかし、少女は、そうした逆境をまるっと呑み込み成長する。

自身の出自をドイツ人と偽っていた過去からも脱皮し、
民族としてのアイデンティティを強く意識しながら。