RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ふたつの名前を持つ少年@109シネマズ川崎 2015年8月19日(水)

封切り五日目。

席数89の【シアター9】は満員の盛況。

オープニングの前に「文部科学省特別選定」等のテロップがかぶる。
が、客層にお子達の姿はほぼ無く、
文芸モノや戦争モノらしく
高齢の客が多く見受けられる。


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原題は〔RUN BOY RUN〕。
でもこの邦題は意外と悪くない。
足して二で割ると丁度良い塩梅か。

何れも主人公の少年が父親から
言い残された言葉だから。


少年はユダヤ人であるとの出自だけで、
ナチスからは当然のように、しかもある時は
ナチ信奉者からも、挙句の果てには密告して報酬を得るものからも
ことごとく付け狙われ、まさに四面楚歌状態。

一方で彼をユダヤ人と知って、または疑っていても
受け入れ庇護する人々も現れる。
彼等・彼女等のお陰で、少年は何とか命脈を繋ぐ。
ここいら辺は禍福は糾える縄の如し。


物語は1942年から始まる。
なのであと三年間忍べば、彼は自由になれることを
我々は知っている。

果たして生き延びることができるのか、
がストーリーの主要な幹であり、
少年の家族はどうなったのか、
庇った人達はどうなったのか、が枝葉の部分。

幾つかのエピソードについては
きっちりと答えを出し、幾つかについては
暗喩に留めている。
しかし、例えば劇中のある人物の
「ナチもソ連も変わらない」との呟きに象徴されるように、
やはり我々はその後の帰趨についても概ねは理解をしている。


いみじくも昨年公開された〔さよなら、アドルフ〕は
ナチ幹部の娘達が逃避行を繰り広げるオハナシだった。

立場はどうであれ、戦争はこういった悲劇を数多造り出す。

その中で自身のアイデンテティを保ちながら生き延びることは
どんなに苛酷で困難であることか。


最後まで観終わって初めて判ったこと、
何と本編は実話を基にしていると言う。

一人の少年を掴まえる為に、
これ程多くの兵士を投入することの馬鹿馬鹿しさ
(あ、でも日本でも戦時下、似た様なコトがあったんじゃ・・・・)。
また、その為に兵士達が行う禍々しい専横振り。

戦争と言う一種の狂気が、この様なコトを
平然と起こしてしまう。

戦後七十年の今、我々はもっときちっと
そのことに向き合うべきかもしれない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


それにしても、本作もそうだし
〔悪党に粛清を〕もそうだった、
何れも「スターチャンネル」プレゼンツ。

なかなか良い仕事してるんじゃないか
最近の「スターチャンネル」。