RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男@チネチッタ川崎 2017年1月9日(月)

封切り三日目。

席数290の【CINE4】の入りは四割ほど。

題材故か、客層は高齢の男性多し。


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彼の国では
直近でも随分と高齢のナチ戦犯がイマイマになって
実刑判決を受けたことが報道されたと記憶している。

そうした徹底的な追及は
てっきり戦後すぐからと(勝手に)思っていたものだから
まずはそれが違っていたことに驚かされる。

実際には、戦後十年を経ても
国家の組織中枢に本来であれば断罪されるべき人物が多く蔓延っており
彼らが自己及び係累の保安を図るため
主人公の行動をことごとく妨害する。


それに対抗しつつ戦争犯罪者を摘発するための糸口として
検事である『フリッツ・バウアー』は
旧SSの中佐である『アドルフ・アイヒマン』にターゲットを絞り
彼がアルゼンチンに潜伏しているとの情報を得る。

できることならば自国が起こした犯罪のけじめとして
国内に召還し、公けな場で裁きたいのだが、
先に挙げた理由により思うに任せない。

結果彼は国家反逆罪に問われる危険性を覚悟で
モサド」に情報をリークする。


そうまでして邁進するのは
『バウアー』自身がユダヤ人であることも理由の一つかもしれないし、または
圧力に屈して、戦中に変節してしまった過去も挙げられるかもしれない。

それ以外にも彼はけして高潔だけの人物ではなく、
その性的嗜好、あるいはブラックメールに対しても過剰なほどに動揺し
心の安寧のために親戚に電話を入れるなどの
親しめるほどの人間臭さが出ているエピソードも語られ、
何れもが人となりを描くのに有効に機能している。


アイヒマン』が「モサド」によって拉致されたのは周知の事実であるし
『バウアー』がそのことに寄与したのも
(自分は知らなかったけれど)彼の死後に明らかにされている。

よって本作の焦点は、その過程のサスペンスにあるのではなく
『バウアー』の揺るがぬ強い信念が
国家の方針さえをも大きく転換させる契機となる点の描写にこそある。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


イミテーション・ゲーム〕でもそうだったけど
西洋では「男色」に関して、随分と忌避感が強いのだな、と
改めて思う。罪に問われてしまうんだものな。

その点が主人公の強い思いの描写を補強するエピソードの一つとして
有効に機能しているのは確かなんだけど。