封切り四日目。
席数172の【シアター4】の入りは七割ほど。
2006~2010年頃だろうか、
『荻上直子』監督により撮られた
〔かもめ食堂〕〔めがね〕〔トイレット〕といった一連の作品群。
「異文化交流」とのテーマはありつつ、
センセーショナルな事件は起きず、
ゆったりとした時間が流れて終幕に至るとの共通項
(出演者もかなり重複していたわけだが)。
が、それなりに興行収入もあったことから
続けざまに制作されたとの認識。
本作を観ていて、それらを想起する。
「PMS(月経前症候群)」で月に数日は情緒が不安定に。
周囲にきつくあたり軋轢を生んでしまう『藤沢美紗(上白石萌音)』。
「パニック障害」で、大企業の激務はおろか通勤することさえ困難になり
町の小企業に派遣されている『山添孝俊(松村北斗)』。
同じ会社に勤める二人が
最初は反発していたものの
あることをきっかけに互いを気に掛けるように。
相手の症状に興味を持ち理解することで
最初はとげとげしかった心持ちが次第に柔らかくなり、
結果、生きることにも前向きになる。
ただそれで、自身の症状が改善するわけではないにしろ。
とは言え、そこから劇的な展開が待ち受けるわけではない。
物語りはやはり淡々と進む。
彼女や彼の周囲も
二人のことを理解している
所謂、良い人で構成されており
(もっとも、そのうちの幾人かは
心に傷を負っていることが、ちょっとしたエピソードで示される)、
心地好く観続けることができる。
中途、人生の岐路とも言うべき
『美紗』の決断や『孝俊』の決意はあっても、
大きな山場となることはない。
傍から見れば大きなメルクマークなのに、
何事も起きなかったかのように恬淡として。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
明けない夜は無く、
暗闇があるからこそ分かることもあるとのメッセージは明瞭で
心にも沁み入る。
シルキーなトーンが全体を貫き、
ある意味安心して観ていられるのは、
直近で公開された〔PERFECT DAYS〕と
近似のテイストとの記憶。
同じような作品が作られ受け入れられるのは、
時代がそうした癒しに近い感覚を求めている
シンクロニシティなのかもしれない。