封切り三日目。
席数120の【SCREEN8】は満席の盛況。
2008年の「リーマン・ショック」で懲りたかと思いきや
政府による金融機関救済や
富裕層への優遇措置を背景に
ヘッジファンド等による
市場での専横はとどまるところを知らぬ。
獲物を喰い尽くすハイエナのように
狙った会社にカラ売りを仕掛け
自分たちの利益のみを最大化。
ターゲットに定めた会社の社会的意義を尊重しようとか、
ステークホルダーを慮る等の気持ちはさらさら無し。
経営者たちは莫大な利益を得、優雅な暮らしをおくる。
社会層間の格差は広がるばかり。
それに一矢を報いる出来事がほんの数年前に起きる。
カラ売りを浴びせかけられ下落した「GameStop」の株を個人投資家が大挙して購入、
値が上がっても売り抜けせずに
そのまま保有したため同社の株価は高騰、
結果ヘッジファンド側は大損失を被る。
ないがしろにされてきた個人投資家による痛烈なしっぺ返し。
その呼びかけを行ったとされる『キース・ギル(ポール・ダノ)』が本作の主人公。
もっとも彼は
ヘッジファンドの専横への怒りが背景にあったとは言わない。
あくまでも過小評価されている「GameStop」の株価を是正するためと主張。
それが本音かは判らぬが、利益を得ようとしなかったのは事実のよう。
とは言え、個人投資家達が同じ考えだったかといえば
それは心許ない。
あくまでも同床異夢であり、持てる者たちに一泡吹かせたいとの意図が強力にあったのではないか。
ここでは『キース』の葛藤とともに、
市井の人々をも多く登場させ、
そのプロフィールを見せることで
彼や彼女らが「GameStop」株に入れ込むモチベーションを明らかにする。
投資が末端の人々にまで浸透したアメリカらしい実態と合わせ、
一般市民が富裕層に対しどのような思いをいだいているかも
皮相な視点で描き出す。
優雅に暮らすヘッジファンドの経営層と
日々の暮らしにも窮する人々との対比も鮮やかに。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
観終わって痛快なカタルシスを得ると同時に
国による救済策のお陰で生き永らえた金融機関が
喉元過ぎれば熱さを忘れるのは
どの国も同じなのだと嘆息。
そこまでの苛烈さはないものの、
わが国でも似たような事例は起きているのだろう。