RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー@チネチッタ川崎 2023年8月19日(土)

封切り二日目。

席数129の【CINE2】の入りは七割ほど。

 

 

「第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門」に出品も、
上映中に退席者が続出したとのいわくつきの一本。

もっとも、自分の鑑賞時には
誰も中途退出者はいなかったが。

思わず身もだえし居心地が悪くなる、
神経を逆なでするグロテスクシーンは頻出も
耐えられないほどではなく。

彼の地では、審査員を含めて
どれだけデリケートな人々が多いのか、と
逆に首を傾げる。


デヴィッド・クローネンバーグ』の作品は
世評では〔ヴィデオドローム(1983年)〕も
個人的には
デッドゾーン(1983年)〕と
ザ・フライ(1986年)〕が双璧。

後者は監督得意のフィジカルの崩壊も
前者はメンタルに分け入って行く一本。

共に、図らずも異能を得てしまった男の悲しみと
哀切極まる最後を描き秀逸。

クリストファー・ウォーケン 』や
ジェフ・ゴールドブラム』の演技も素晴らしかった。


で、本作、舞台は近未来。
主人公の『ソール(ヴィゴ・モーテンセン)』は
パートナーの『カプリース(レア・セドゥ)』と組み、
自身の体の中に新たに臓器を作り出し
それを摘出する一部始終をインスタレーションとして観客に魅せる
一種のアーティスト。

疫病や難病は既に駆逐・克服され、
人類は自らの体を更に変容させる途上に。

一方で国家は、その進化の暴走を恐れ
監視の目を広げていた。


自身の身体を傷つけてのアートは
軽いモノなら現在でも。

『宮川ひかる』の作品群などはその好例。
もっとも、痕が激しく残るほどではないにしろ。


肉体の改造は
金原ひとみ』の〔蛇にピアス〕にも登場する
「スプリットタン」あたりか。

勿論、何故にそうした行為に走るのかは、
自分には想像できないけれど。


ここでは『クローネンバーグ』お得意の
意図的な肉体の改造や変化で愉悦を感じる人が次々と登場、
加えてそれを観て楽しむ富裕層の存在も。

ある意味、閉塞した社会のディストピア然とした
お決まりのパターンとも言える。


しかし終幕に向け、物語は意外な展開を見せる。
それは図らずも起きてしまう「適者生存」とも取れる一種の進化形。

おそらくヒトは
外見も内側も、今までとは異なるモノになって行くに違いない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


劇中で使用される術具等は
『ギーガー』が〔エイリアン(1979年)〕で見せたデザインを彷彿とさせる。

本作での種の進化とも関連する
有機物と無機物が混交した質感が
それなりに意識されているのだろうか。