封切り二日目。
席数118の【シアター5】の入りは四割ほど。
中世の画家たちは、絵画の中に多くの寓意を盛り込んだ。
神への畏怖や禁忌であったり、教訓であったりと
その内容は様々だが
本作の中にも、それを同じものが幾つか透けて見えてしまう。
放漫への戒め、誓いを破ることへのしっぺ返し、或いは
不実や不義理への報い。
しかし、かりにも『ギレルモ・デル・トロ』であれば、
彼お得意のダークなスリラー/ファンタジーを前面に立て
観客を楽しませることに執心するハズ。
勿論、薄気味悪さを感じさせる一本には仕上がっているのだが、
かなりの違和感を覚えてしまう。
故有って古里を捨てた男
『スタン(ブラッドリー・クーパー)』が辿り着いたのは
遊興地のサーカス小屋。
持ち前の人当たりの良さと飲み込みの速さを発揮、
ハンサムな見た目も相俟って
ほどなく重宝がられるようになる。
そこで彼が覚えたのは人間を観察する技術。
『シャーロック・ホームズ』や『マイクロフト』もかくや
と思わせるほどの眼力を発揮し、
それを読心術のショーに取り込み成り上がる。
が、そこで留まっている内は良かったのだが、
彼は次第に、まやかしの「交霊術」の方に身を寄せ
富裕層や権力層に取り入り出す。
目当てはあくまでも「金」との言も、
真意はどこに在ったのかは不明だが。
世界は第二次大戦に突入しようとしているも
アメリカまでその余波は及んではいない。
しかし漠然とした不安は人々の心の隅に在り、
超自然的なものに頼ろうとする遠因に。
『スタン』はそこに勝機を見い出し、
持ち前の才覚を発揮し、つけ込む。
しかし、周到さを重ねた過去の行為が
確証バイアスとも言うべき慢心を生み
最後には輪廻がくるっと完成する。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
異形のモノを好む監督の嗜好は
ここでも如何なくなく発揮される。
しかし「ギーク」と称されるそれは
実際は真正の人間。
自分も幼い頃に見世物小屋で
蛇や鶏を喰い千切る女性のショーを見た記憶がある
完全なギミック。
〔パンズ・ラビリンス(2006年)〕や〔パシフィック・リム(2013年)〕
のクリーチャーに比べれば、おとなしめで
意図的に人間に寄せており。
そのことがどうしても
幻想譚よりも現実のリアルな因果律に見えてしまう一因なのだが。