RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ナイトメア・アリー@109シネマズ川崎 2022年3月26日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター5】の入りは四割ほど。

 

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中世の画家たちは、絵画の中に多くの寓意を盛り込んだ。

神への畏怖や禁忌であったり、教訓であったりと
その内容は様々だが
本作の中にも、それを同じものが幾つか透けて見えてしまう。

放漫への戒め、誓いを破ることへのしっぺ返し、或いは
不実や不義理への報い。

しかし、かりにも『ギレルモ・デル・トロ』であれば、
彼お得意のダークなスリラー/ファンタジーを前面に立て
観客を楽しませることに執心するハズ。

勿論、薄気味悪さを感じさせる一本には仕上がっているのだが、
かなりの違和感を覚えてしまう。


故有って古里を捨てた男
『スタン(ブラッドリー・クーパー)』が辿り着いたのは
遊興地のサーカス小屋。

持ち前の人当たりの良さと飲み込みの速さを発揮、
ハンサムな見た目も相俟って
ほどなく重宝がられるようになる。


そこで彼が覚えたのは人間を観察する技術。

シャーロック・ホームズ』や『マイクロフト』もかくや
と思わせるほどの眼力を発揮し、
それを読心術のショーに取り込み成り上がる。

が、そこで留まっている内は良かったのだが、
彼は次第に、まやかしの「交霊術」の方に身を寄せ
富裕層や権力層に取り入り出す。

目当てはあくまでも「金」との言も、
真意はどこに在ったのかは不明だが。


世界は第二次大戦に突入しようとしているも
アメリカまでその余波は及んではいない。

しかし漠然とした不安は人々の心の隅に在り、
超自然的なものに頼ろうとする遠因に。

『スタン』はそこに勝機を見い出し、
持ち前の才覚を発揮し、つけ込む。

しかし、周到さを重ねた過去の行為が
確証バイアスとも言うべき慢心を生み
最後には輪廻がくるっと完成する。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


異形のモノを好む監督の嗜好は
ここでも如何なくなく発揮される。

しかし「ギーク」と称されるそれは
実際は真正の人間。

自分も幼い頃に見世物小屋
蛇や鶏を喰い千切る女性のショーを見た記憶がある
完全なギミック。

パンズ・ラビリンス(2006年)〕や〔パシフィック・リム(2013年)〕
のクリーチャーに比べれば、おとなしめで
意図的に人間に寄せており。

そのことがどうしても
幻想譚よりも現実のリアルな因果律に見えてしまう一因なのだが。