封切り三日目。
席数226の【SCREEN5】の入りは四割ほど。
「おまえの罪を自白しろ」と言われたとき、自分ならどう答えるだろう。
極めて難しい問題なのは、罪の意識は人それぞれで濃淡あり。
例えば「いじめ」の常習者が、そのことを罪に感じているかは問題の一つ。
自覚がなければ、告白もないわけで。
懺悔や告解を日常的に行うキリスト教圏では異なるかもだが、
そうした風習があまりない本邦では極めて難しいかも。
ところが本作の主要な登場人物たちは、
同じように迫られた時に身に覚えが。
政治家としての権勢を利用し
知己への利益供与のために立ち回った過去、
またはこれからしようと企んでいることに思い至る。
自分への利益誘導にならなければ良しとの見方もあろうが、
とは言え利益を得る一方で不利益を被る人も出るわけで。
国会議員『宇田清治郎(堤真一)』の孫娘が誘拐され、
送られて来た脅迫文に書かれていたのは身代金の額ではなく
タイトルの一文。
それも、残り二十時間程度のうちに
記者会見を開かねば孫娘は無事ではすまぬとの内容。
当人も事務所のブレーンも
イマイマ進行中の案件と考え、
告白を行うことの判断とともに、小さくは自分の議員としての立場を、
大きくは与党政権をどうすれば維持できるかを考える。
ここで丁々発止の政権内のやり取りが繰り広げられ、
えもいわれぬ緊迫感。
ただ「指揮権発動」云々の箇所は
かなりわかりにくい。
なにせ戦後実際に「指揮権」が発動されたのは
一回しかないのだから。
とは言え、与党政権内でのライバルを貶める策謀や
裏切り・裏切られによるアップダウンは、
実際にこんな腹の探りあいが行われているのだろう、と
見ていて憐憫と侮蔑の感情がないまぜに。
こんな人たちが選良であり、
国民の税金を食べて国を回しているのかと。
『清治郎』の選択は極めて良識的なもの。
嘗て「人命は地球より重い」と語った総理大臣もいたことを思い出す。
しかし事件はこれで終わりではないのが
{クライムサスペンス}の二転三転。
次の展開が待ち受けており、
原作者のの『真保裕一』と脚本の『久松真一』の面目躍如。
が、ここで気になるのが
次男で父の議員秘書『晄司(中島健人)』の良すぎる勘。
些細なことからそこまで推理できるか!と鼻白んでしまい。
更にそれに賭けて動く警察も、なんだかぁとの印象も、
まぁそうしないとお話が続かないからね。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
ラストのシークエンスは素晴らしいの一言。
多くの民の幸せを望み政治の世界に飛び込んだ有為の若者が
次第に清濁併せ吞むようになる古今東西で必然の流れ。
〔オール・ザ・キングスメン(1949年)〕を想起し、思わずにんまりとしてしまう。