RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

おまえの罪を自白しろ@TOHOシネマズ日本橋 2023年10月22日(日)

封切り三日目。

席数226の【SCREEN5】の入りは四割ほど。

 

 

「おまえの罪を自白しろ」と言われたとき、自分ならどう答えるだろう。

極めて難しい問題なのは、罪の意識は人それぞれで濃淡あり。
例えば「いじめ」の常習者が、そのことを罪に感じているかは問題の一つ。
自覚がなければ、告白もないわけで。

懺悔や告解を日常的に行うキリスト教圏では異なるかもだが、
そうした風習があまりない本邦では極めて難しいかも。


ところが本作の主要な登場人物たちは、
同じように迫られた時に身に覚えが。

政治家としての権勢を利用し
知己への利益供与のために立ち回った過去、
またはこれからしようと企んでいることに思い至る。

自分への利益誘導にならなければ良しとの見方もあろうが、
とは言え利益を得る一方で不利益を被る人も出るわけで。


国会議員『宇田清治郎(堤真一)』の孫娘が誘拐され、
送られて来た脅迫文に書かれていたのは身代金の額ではなく
タイトルの一文。
それも、残り二十時間程度のうちに
記者会見を開かねば孫娘は無事ではすまぬとの内容。

当人も事務所のブレーンも 

イマイマ進行中の案件と考え、
告白を行うことの判断とともに、小さくは自分の議員としての立場を、
大きくは与党政権をどうすれば維持できるかを考える。


ここで丁々発止の政権内のやり取りが繰り広げられ、
えもいわれぬ緊迫感。

ただ「指揮権発動」云々の箇所は
かなりわかりにくい。
なにせ戦後実際に「指揮権」が発動されたのは
一回しかないのだから。

とは言え、与党政権内でのライバルを貶める策謀や
裏切り・裏切られによるアップダウンは、
実際にこんな腹の探りあいが行われているのだろう、と
見ていて憐憫と侮蔑の感情がないまぜに。

こんな人たちが選良であり、
国民の税金を食べて国を回しているのかと。


『清治郎』の選択は極めて良識的なもの。
嘗て「人命は地球より重い」と語った総理大臣もいたことを思い出す。

しかし事件はこれで終わりではないのが
{クライムサスペンス}の二転三転。

次の展開が待ち受けており、
原作者のの『真保裕一』と脚本の『久松真一』の面目躍如。


が、ここで気になるのが
次男で父の議員秘書『晄司(中島健人)』の良すぎる勘。

些細なことからそこまで推理できるか!と鼻白んでしまい。

更にそれに賭けて動く警察も、なんだかぁとの印象も、
まぁそうしないとお話が続かないからね。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


ラストのシークエンスは素晴らしいの一言。

多くの民の幸せを望み政治の世界に飛び込んだ有為の若者が
次第に清濁併せ吞むようになる古今東西で必然の流れ。

〔オール・ザ・キングスメン(1949年)〕を想起し、思わずにんまりとしてしまう。