RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

泣くな赤鬼@109シネマズ川崎 2019年6月23日(日)

封切り十日目。

席数89の【シアター8】の入りは八割ほど。


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高校球児にとって、甲子園へのチャンスは
一生のうちに最大で五回しかない狭き門。

一方で、監督を始めとするスタッフにとっては
自分がその任にある限り継続できる根本的な違い。

例え強豪校でなくっても、図抜けたピッチャーが居る、とか
走攻守に秀でた粒選りが複数名居るとかで、その可能性は年毎に変動するし、
アタリが巡って来た時は切歯扼腕するのだろう。


本作の主人公『小渕/赤鬼(堤真一)』には
嘗てチームを県大会の決勝まで導いた実績が。

しかし、進学校へ移動になってからは、凧の糸が切れたように
ふっつりと野球への情熱を失ってしまっている。

そんな彼の元を
昔の教え子『斎藤/ゴルゴ(柳楽優弥)』の妻『雪乃(川栄李奈)』が訪ねて来るたところから
ストリーは動き出す。


本編は『ゴルゴ』が野球部に在籍した三年弱を時系列で追いながら
チームメイトも含めたかかわり合いを丁寧に描く。

その過程で『赤鬼』はこと野球に関しては
家庭をも顧みないワーカーホリックであることなどが語られつつ、
もっとも鋭い視点が注がれるのは選手と監督の関係性。

監督は選手のモチベーションを利用しながら時に競わせ、時に期待を掛け
手駒の様に差配する。

甲子園との目標が共有できているからこそ可能なやり方も、
ではその構造に疑問を持つ者が出て来た時にはどうなるか。

監督としては切り捨てるのか。
でも生徒と教師としての立場ならどうか。


教師だって人間だもの、
好き嫌いは当然、
反りが合わない者、贔屓をしたくなる者、
つい感情的になってしまう者と生徒たちも様々に存在する。

小学生にとっては(今ドキは知らないけど)教師の立場はかなり絶対的。
しかし、中・高と年齢を重ねるに連れ、前述の様な世間も了解されてくる。

本作の主人公は教師にして野球部監督の二足の草鞋。
両方の思いがないまぜになってしまうのはありがちだよね。


けして小さくはない代償により
心にわだかまりを抱えていた『赤鬼』は再起する。

最後のシークエンスで、消えてしまったかに見えた彼の情熱は
実は熾火の如くしっかりと保たれていたことが判る。

また、中途のシーンでも
自身が指導した選手への目配りもきちんとされている
実は鑑の様な人物であることも描かれてはいるのだ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


熱血の時も、萎んでしまったように見える時も、
堤真一』の好演が光る。

そしてもう一つ『川栄李奈』が随分と良い感じに育っている。