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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン@TOHOシネマズ日本橋 2023年10月22日(日)

封切り三日目。

席数226の【SCREEN5】の入りは八割ほど。

 

 

実際に起きた事件の映画化も
最近ありがちなその旨の提示はなし。

底本もあるようで
『デヴィッド・グラン』によるノンフィクションのタイトルの邦訳は
〔花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生〕。

随分とヒドイと思いつつ、ある意味
本作の内容を端的に現わしているかも。


物語りの舞台は1920年代のオクラホマ州オーセージ。
主人公が第一次世界大戦帰りであることや、
スペイン風邪に罹患しなかったことなども歴史的背景として語られ。

押し込められた居留地で、たまさか石油が噴き出したことから
突然裕福になった「オセージ族」。
その資産を悪辣な手段で奪おうとする白人たち。
更にはそのことに起因する殺人事件を捜査するFBI


FBI自体は1908年の創設も、
事件当時の捜査局長は敏腕で鳴らした『ジョン・エドガー・フーヴァー』。
原作のタイトルとは異なるも、
この時期に一気に名を馳せるようになったのは間違いのないところ。


戦場帰りの『アーネスト(レオナルド・ディカプリオ)』は
土地の権力者の叔父『ウィリアム(ロバート・デ・ニーロ)』を頼りその地に赴く。

最初は使い走りのようなことをしていたのだが
次第に裏の仕事にも手を染めるように。

一方で(叔父の唆しもあり)「オセージ族」の娘『モーリー(リリー・グラッドストーン)』と結婚、
莫大な資産の相続者となる権利も得る。


しかし町では「オセージ族」が謎の死をとげたり、殺害される不可思議な事件が頻発。
本編でも最初の方は、誰が犯人かは判然とせず。

しかし薄皮を剥くように、善人の面の皮がめくれて行き、
ついには真実が白日の下に曝され。


莫大な金の為には、人間はここまで非情になれるのかとの切ない思い。
或いは先住民の命はそこまで軽んじられるのかとの戦慄にも似た感情。
そうしたものがないまぜになり背筋が寒くなる。

更には、自身の親族さえ犠牲にできる非道さの源泉は
どこから来るのだろうか、と。

『アーネスト』の本質は気のいい男。
そこがつけ入るスキがありまくりで
良いように利用された結果の不幸とも言えるのだが。


三時間を超える長尺も冗長なシーンは皆無。

繰り返される平穏な日時が、次第に異質なものへと変化し、
気付いた時には恐ろしいことになっている経緯の描写が秀逸。

また、善意の隣人の本質が次第に明らかになる過程を描くには
これだけの尺はどうしても必要に思える。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


僅か百年前の出来事も、
最後に語られる関係者のその後については驚きを隠せない。

これだけの犯罪に課せられる量刑が軽く感じられ、
また恩赦まで施されるのは何故なのだろう。

命が(それも先住民の)が軽んじられた時代のせいか、
それとも彼の地ならではの考え方なのだろうか。