封切り三日目。
席数129の【CINE2】の入りは四割ほど。
タイトルの〔NITRAM〕は
本作の主人公『MARTIN』の名前を逆さ読みにし
幼い頃からちょっと違っている彼の蔑称として
同級生等が用いたもの。
当然の様に本人はその呼称を嫌っている。
また、「REDRUM REDRUM」と呟いていた少年の一家が悲惨な体験をしたように
昔から逆さ読みは凶事のサインと相場は決まっている。
実際にはどうだったのかは分からないが、
映画で描かれる『マーティン』は長じてからも
見ていてまだるっこしいし
感情移入すらしたくない人物造形。
精神的に何らかの障害を持っている可能性もあるけれど、
深く考えることをせずに直情的。
「俺はまだ本気出していないだけ」
或いは「俺は何時かやってやるぜ!何かを」のような
何事も長続きせず、
共感の欠片すら持つことができない。
1996年にオーストラリアで起きた
無差別銃乱射事件の犯人の
犯行直前までを実録した作品と聞いている。
テロ行為との違いはあるものの
〔ウトヤ島、7月22日(2018年)〕が
銃を乱射され逃げ惑う側を描いたA面とするなら、
こちらはする側の心情を扱ったB面とも言えようか。
もっとも先に書いたように、
本人に対しては同情の一片すら
まるっきり持つことは不可能。
両親は兎も角、周囲からのパッシングだけで
これほどの悪が生まれてしまうものなのだろうか?
たとえ、自身に苛立ちを抱えていても、
それを暴力の形で外に発露させるのは
許されぬだろう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
エンドロールの前に、この事件が契機となり
同国内での銃規制が促進された旨の注記が入る。
しかし実際には、二十年を過ぎ
所有される銃の数は却って増えているとも。
一方で、建前的には銃が無い日本でも、
偏った思考や思想による大量殺人は後を絶たず、
武器の有無だけが象徴的に扱われることには首を傾げてしまう。