封切り二日目。
席数118の【シアター5】の入りは三割ほど。
監督の『松居大悟』が演劇出身とのこともあり
前作の〔くれなずめ〕に続き本作も舞台モノ。
まぁ、過去作の例からも判るように、
同業界での挫折をテーマにしたこの手の作品は、
激賞できる対象になった記憶はとんとないのだが。
直近では〔弥生、三月-君を愛した30年-(2020年)〕が
同様の手法の語り口。
一年のうち、同じ日付だけを切り取り
先の一本は30年間を展開する。
ここではそれが7月26日で、且つ
ある特殊な意味性を持たせ、
期間はおおよそ十年弱か。
最初の内は、大写しになるカレンダー付き時計の
日にちは一緒、時間だけが異なるので
何のことかが判らない。
暫し{ループもの}かと勘違いしてしまった(笑)。
それでも曜日が変わり、主人公達の環境も移ろうので、
ああ、なるほど、次第に過去に遡っているのだな、と
理解できるようになる。
主な登場人物は、
足のケガの為にダンスの道を諦めた『照生(池松壮亮)』と
タクシードライバーの『葉(伊藤沙莉)』。
冒頭から各々の現在が交互に描かれ、
最初のうちは二人の関係性すら判然とせず。
しかし、それが次第に重なって行き、
元々は恋人同士ではあるものの、
今では袂を分かっていることが了解される。
特に印象的な挿話があるわけではない。
巷にアリがちな出会いと、その後の諍いの果て。
直近でも多く作品化されている
男女の関係性で、既視感はありまくり。
『葉』の職業が異色なのと、
それを導入するため『ジム・ジャームッシュ』の
〔ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年)〕を頻繁に持ち出すのだが、
あまり成功しているとは言い難く。
愛情を象徴する存在としての
公園で亡くなった妻を待ち続ける『ジュン(永瀬正敏)』も
あまりしっくりとは嵌っていない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
タイトルの「ちょっと」の言葉とは裏腹、
観客は二人の物語りを二時間近く「たっぷり」見せられる。
それが不快に感じられないのは
『伊藤沙莉』の魅力と、ほんのチョイ役にも
有名役者を贅沢に使うアソビがあるから。
それほど支持される監督とのことか。
確かに〔アズミ・ハルコは行方不明(2016年)〕は快作だった。