封切り二日目。
席数112の【SCREEN8】の入りは八割ほど。
十年前に両親を亡くし、
それからは互いに支え合って生きて来た四人の兄妹。
そのうちの一人が宇宙人だったら、との
徹頭徹尾{フアンタジー}の中に、
地球的家族の絆を盛り込んだ{コメディ}。
ややありきたりではあるものの、
家族間の愛情を丁寧に謳い上げる。
自分は全くそういった感情はわいて来なかったものの、
劇場内では最後のシークエンスに向け涙を拭う人の姿が多数。
土星から二十三年前(土星の公転周期)に来た宇宙人は
次男の『日出男(中村倫也)』。
到着の様子や、亡き両親と長兄『夢二(日村勇紀)』がすんなりと彼を受け入れた経緯は不明も、
長女の『想乃(伊藤沙莉)』や三男の『詩文(柄本時生)』は何の違和感も無く暮らしてはいた。
過去の記憶を操作されたとの仕掛け付きで。
しかし、あと一ヶ月で地球を離れねばならぬタイミングになり、
自身が宇宙人であることをカミングアウトしたことから、
幾つかの騒動が出来。
まずもって驚く末子二人も、そこには悲愴感や
危機感はまるっきり無く。
全てがギャグに彩られ、
「ああそう言えば、思い当たる節が」と
すとんと胸の中に落ちて行く。
そのシークエンスが既にして笑いにまみれ、
以降このテイストが延々と繋がって行く。
『日出男(土星名、トロ・ピカーナ』は漫然と地球に来たわけではなく、
幾つかのミッションを持っており、
中でも最大の使命が未だに未達成であることに思い悩む。
それを完遂するには、何よりも大切と教えられて来た
(土星人には無い感情の)家族の関係性を損なう恐れがあったから。
とは言え、物語の全体を貫くトーンにシリアスさは見られない。
会話に駄洒落は飛び交い、周囲の登場人物も
ほぼほぼハートフル。
が、こうした一家にも、それなりの問題が
ここぞとばかりに起こり、
『日出男』は持ち前の異能でそれを解決、
あたかも、自身が地球を離れる前の
置き土産のようにして。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
それがドラマとは言え、
過去にもこうしたトラブルに『日出男』が膾炙した経緯はあろうも、
それがエピソードとして出て来なかったのは残念。
また、ラストシーンも、ある程度予想の着く帰結も、
冒頭のシークエンスでそれを提示する必要があったかは疑問の残るところ。