RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ミッドナイトスワン@109シネマズ二子玉川  2020年9月26日(土)

封切り二日目。

席数134の【シアター6】は一つ空けての案内なので
実質67席。それが満員の盛況。

この地味な作品がねぇ、と
ちょっと感心する。

やはり『草彅剛』クンの集客力かしら。

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〔台風家族〕では強欲さを隠しもしない長男に
任侠ヘルパー〕では義侠心のあるヤクザに
芯から成り切ってしまう『草彅』クンが今回演るのは
カラダはオトコもココロはオンナのLGBT。

『凪沙(実際の名前は健二)』は
息苦しさを感じる田舎を出て新宿のショーパブで働くものの
ここも安住の場所ではなく偏見や差別にさらされ生き難さを味わう。


この一連の描写は、自分として正直意外。
地方では兎も角も、都会ではより寛容に理解されていると思っていただけに。

もっとも我が身に重ねてみれば、新宿で
ミニスカートを履いたり、セーラ服を着たおじさんを見れば
近寄りたいとは思わず。

あまり他人のコトは悪くは言えんなぁと思ったり。


一方で地元の広島で息苦しさを感じる少女が一人。

母親の『早織(水川あさみ)』からネグレクト状態にある娘の『一果(服部樹咲)』は
このままでは新聞沙汰になるかもと心配する親族の総意で
縁戚である『凪沙』の元に送り届けられる。

最初は反発し合う二人が、あることを契機に心を通わせるようになるのが大まかな流れも、
『凪沙』が母性(父性?)を感じるようになるエピソードがとりわけ素晴らしい。

何気ない話の中にすいっと紛れ込ませながら後々余韻を残す。


一つには『草彅』クンを始めとする役者陣を楽しむ作品。
当然、彼については論を待たない。

水川あさみ』も〔喜劇 愛妻物語〕同様、振り切って毒親を演じる。
こんな母親の下に生まれたら、ホントに不幸だなと思わせるほど。


そして『一果』を演じた『服部樹咲』。率直に言って演技は今だし。
しかし鍵となるバレエの場面は彼女無しでは成立せず。

もう体形からして違うものね。小さい顔、長い手足。

昔からの議論のタネである、役者に技術を会得させるか、
それともその道のプロに演技を鍛えるか。

本作では後者の手法を選択も、それが中吉くらいの出来に結実。


最初は反発し合う二人が次第に心を通わせるプロットはありがちも、
LGPTとネグレクトとのイマっぽい要素に苦しむ二人を上手く結び合わせ
じわりと染みるエピソードを重ねながら上手く展開させている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


勿論、幾つかの瑕疵は散見。

この手のドラマにありがちなバレエのシーンに多くを割いたため、
主要な登場人物である『凪沙』『一果』『早織』の、
特に後者二人の田舎での心情の変化の背景が見えないため
最後のシークエンスではややの唐突感。

もうちょっと丁寧に描けていればなぁ、と
残念な思い。