封切り二日目。
席数154の【CINE9】は一席空けての案内だと実質77席。
その七割は埋まっている印象。
舞台となるのは大阪の廃れ始めている地方都市。
唯一のショッピングモールは閉鎖を間近に控え、
そこに屯する人々は行き場を無くし、
働く人は職を失うだろう。
そういった閉塞感の漂う町で
キャラの立ちまくった三組の高校生男女が疾走する。
モチーフそのものはありがち。なので、そこで展開される人間関係とエピソード、
主演扱いの『松本穂香』を楽しみに観に行ったのだが・・・・。
本来なら『縁』を演じた『松本穂香』の地力は頭抜けているハズ。なのに何故か
他の五人と同レベルにまで引き下がり、イマイチ本領を発揮できておらず。
いや勿論、時折きらりと光るものは見せるも
普段の彼女に比べれば不満以外のなにものでもなく。
意図的に低水準に合わせたんじゃないよね監督、と
ついつい訝ってしまうほど。
青春モノであるのに「PG12」のレイティングなのは
喫煙シーンがあるから?それとも
露出の全くないセックスシーンがあるから?
各人が鬱屈を抱えながらも奔放な彼等・彼女等の言動は
実際の高校生のそれよりも1m以上遊離し現実感が希薄な印象。
豪雨の中でのショッピングモールでの乱痴気騒ぎにそれは顕著。
同じ感情の爆発でも『相米慎二』の〔台風クラブ〕により親近感を覚えるのは
自分がおぢさんだからかなぁ。
屈折した六人の想いに対して、周囲の大人たちは
包み込むように優しい。
それは肉親だけにとどまらず、教師は勿論、
ショッピングモールの警備員ですら理解を示す。
要は一種のファンタジー。
思春期独特の病にも似た潔癖さに対する処方箋は人それぞれ、
快癒の方向もばらばらながら本作では一応のケリはつけて見せる。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
タイトルの〔君が世界のはじまり〕が示すところも
ラスト近くになり漸くその意図が理解される。
本来ならこの場面こそが、作中の真骨頂であるはずも、
ややあざとい表現に流れてしまったのは少々残念だが。