封切り二日目。
席数118の【シアター3】は半分の案内だと59。
その七割は埋まっている感じ。
物語り世界にひたりながら、
頭の片隅で我が身の過去を想い起こす。
妻が二人目の子供を出産した時はどうしてたっけ?
妻が突然の病気で入院した時はどうしてたっけ?
義母に協力してもらい、田舎の両親にも来てもらい
何とか乗り切ったかな。
それでも最初の数日間は、自分独りだけで幼子の面倒を見ていたなぁ。
会社を休んだり遅刻・早退をしながら(今みたいにフレックスや半休など無い時代)。
大変だった記憶だけが残っている。
でもそれは、先が見えていたから頑張れた。
本作の主人公は、妻を亡くした後に、
親戚からの救いの申し出をやんわりと断り、
幼い娘を独力で育てる決意をする。
十年続くのか、十五年続くのか、気の遠くなる時間。
いか程の無謀な判断かを後々思い知ることになる訳だ。
しかし周囲は何処までも優しい。
父娘を時に厳しく見守り、『健一(山田孝之)』の選択を後押しする。
他生の縁とは言え、肉親ならまだしも
赤の他人の為に泣いてくれる人の数は現実にはいか程か。
事情を理解し、自身の時間を割いてくれる人は
どれほどか。
多くの善意の人々に助けられ、娘の『美紀』は文字通り、
『健一』も人間として大きく成長する。
原作は連作短編とのことで、映画もそれをなぞるように進行する。
なので幕と幕の間で大きく時間が流れ、ややの違和感。
前のシーンの感動が唐突に断ち切られ、
余韻が繋がらないのは残念な編集。
それでもコミカルなシーンを折々に挟み、
時々のエピソードにはほろりと涙する。
特に小道具と、それを経年で使った演出が抜群に上手く、
情景を見るだけで家族にどのような変化が起きたのかを語らせる
優れたカット割りも嬉しい。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
いや~、それにしても、
この手の感涙を搾り取る系って、観終わって
場内が明るくなった時に、なんとなく面はゆい。
まぁ、自分以外にも落涙している客が多く居るのは、
物音等で判ってはいるのだが。
他の人と目があったりすると、
ちょっとどぎまぎするよね。