RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

明け方の若者たち@チネチッタ川崎 2021年12月31日(金)

本日初日。

席数244の【CINE7】の入りは三割ほど。

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自分にはとんと関係のないハナシだったので
すっかり記憶から抜け落ちていたのだが
2010年~2013年にかけては「新就職氷河期」と呼ばれる
大学生の求人倍率がかなり低い時代だったよう。

そんな2012年、大学三年生の冬、
既に内定を得た、所謂「勝ち組」の飲み会に渋々ながら参加した『僕(北村匠海)』は、
やはりあまり気が進まずに来た『彼女(黒島結菜)』と知り合い、
付き合うことになる。


「ボーイ・ミーツ・ガール」の後の展開はお馴染みのもの。

残された大学生活を二人は満喫。しかし、
就職先では希望する部署へ配属されなかった『僕』はくさってしまうものの、
職場でできた親友にも助けられ
『彼女』の応援もあり、なんとかやって行こうとする。


ここで、おやおや、と
思ってしまう。
直近で似たような展開があったぞと思い出す。

有体に作品名を言ってしまえば
〔花束みたいな恋をした〕と類似の流れじゃないか。

と、すれば、この後の二人の関係がどうなるかは
予想が付きそうなもの。

こちらの方が先に公開され観ていれば、
また違った感慨を持ったろうに。

それとも、何か思わぬ仕掛けが隠されているんだろうかと
訝った矢先、驚天動地の事実が明かされる。

それは不意に横っ面を叩かれたような
思いもかけぬ設定。
一瞬脳内が真っ白になる。

それを踏まえた過去のシーンがリフレインされると、
物語はまるっきり違った側面を見せて来る。


先の作品がそうであったように、
本作も多くの鑑賞者の思い出を刺激する一本。

それは恋も勿論だが、
就職時の苦闘やその後の葛藤、
思い通りにならなかった日々を苦々しく、
しかし時として甘すっばく思い出させる。

時事ネタや友人との相克も織り交ぜながら、
誰もが通過儀礼のように味わう切ない体験を
やんわりと繰り広げて見せる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


昔のレコードにA/B面があったように、
ここでも『彼女』の物語りを観たいもの。

何故にと言えば、ほぼ等身大を演じた
黒島結菜』が素晴らしくはまり役。

彼女となら、朝まで一緒に居たいと、
誰しもが思うだろう。

鉄道写真家・南正時作品展@鉄道歴史展示室 2021年12月19日(日)

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「前期」が東日本中心の展示だったので
「後期」はてっきり西日本だと思っていたら、

 

なんのことはない「北海道」「甲信越」「北陸」と
やはり同様の地域の写真が並んでいる。

それにしてもSLが走る姿は
雪景色が似合うことといったらない。

吹雪をついて、
もうもうと煙を上げる雄姿には
思わず声援を贈りたくなる。


いや、それは
刈り取り直前の稲穂が頭を垂れる田園や
紅葉の森林の中でもまた違う趣がある。

日本の四季の移ろいに
なんとはまることか。

 

鮮やかな背景に

黒い無骨な姿が、この上なく美しい。


会期は~2022年3月6日(日)まで。

ソール・スタインバーグ@ギンザ・グラフィック・ギャラリー 2021年12月11日(土)

「シニカルな現実世界の変換の試み」との副題が冠されている。

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ソール・スタインバーグ』は二十二年前に物故も
紙誌に多くの作品を残しているとのことで
会場内にはかなりの数が溢れる様に並べられている。

風刺がぴりりと効いていて、
シニカルな視点で斜めからえぐるような
特異なスタイル。


一方で、これだけあると
歩を進めるに連れ、
おや、似た表現やモチーフが
さっき無かったか?と感じるのも事実。

もっともそれらを含めて、
味わって欲しいのが
見せる側の意図なのかもしれぬ。

或いは、世界は普遍的に
近似な矛盾に満ち満ちているとか。


会期は~2022年3月12日(土)まで。


Creation Project 2021「百年前掛け」@クリエイションギャラリーG8/ガーディアン・ガーデン 2021年12月11日(土)

この時期恒例のチャリティ企画。
今年のお題は「前掛け」。

しかも、家庭の主婦がしているようなお上品なものではなく、
酒屋や八百屋のおじさんが昔よく締めていた無骨なアレ。

如何にも長持ちしそうで、ヘビーデューティにも耐えられそうな
厚手の生地と頑丈な造り。

それに有名アーティストのデザインを乗せて
一枚6,500円で販売。

 

興味は満々も、ちょっと手の出ない金額だなぁと思いながら
「G8」に足を踏み入れると、
なんとギャラリーの方と談笑されている『宇野亞喜良』の姿が!!

うわ~、こんなところで実物のご尊顔を拝めるとは、
なんてラッキー!

つくづく今日来て良かったと、
勝手に言祝ぐ。

 

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会期は~2022年1月22日(土)まで。

 

 

横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」@ポーラ ミュージアム アネックス 2021年12月11日(土)

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入場してまず驚くのは、
館内を斜めに横切って置かれている巨大な物体。

近寄って見ると、透明なプラスチックシートを
セロハンテープで纏め、長大な直方体に形成している。

しかもそのテープの巻き方が几帳面。
縦横がきっちり直線に揃っており、
なんと配慮されているのか、と。


壁に掛かっている平面についても同様。

縦と横の直線で構成されているそれらは
お行儀の良い『ジャクソン・ポロック』のような(笑)。

しかしそこから受ける印象は
不思議と柔らかさと温かみに近いものだ。


会期は~2022年1月30日(日)まで。

 

非日常を踊る@ソニーイメージングギャラリー 2021年12月19日(日)

英語の副題が付いていて
「Japanese Entertainers under the Pandemic」。

コロナ禍で踊り手も不便で窮屈な状態を囲っている。

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ソロで踊る(中にはペアダンスもあるけれど)
彼/彼女を人気のいない場所、主に自宅で撮影している。

写真家は『葛西亜理沙/南しずか/宮川舞子』の三名で、
誰がどれを撮ったのかは、近づいてキャプションを読むまで判らない。


ありがちなダンサーだけでなく
阿波踊りの踊り手」や「ストリッパー」なども撮影対象となっており、
セレクションの妙にもニヤリとさせられる。


会期は~1月6日(木)まで。


マトリックス レザレクションズ@TOHOシネマズ日比谷 2021年12月19日(日)

封切り三日目。

席数489の【SCREEN12】の入りは五割ほど。

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マトリックス三部作〕の公開から今年で十八年。
世界は変容し、勿論、ショウビズに於いても例外ではない。

「#MeToo」や「多様性」が盛んに言われ、
それが作品にも反映される。

その間に
シリーズ監督の『ウォシャウスキー兄弟』も
性適合手術を受け『ウォシャウスキー姉妹』となった。

当然のように本作でも、それらが反映された結末になっているのは
何とも興味深い。


一方、変わらぬものもある。

件の姉妹と『キアヌ・リーブス』の日本への偏愛であり、
それらは作中でも如何なく発揮される。

外見だけは新幹線、客席の造りはまるっきりの西洋風列車の中に突如移動し、
富士山を背景に走行しながら「Tokyoへ移動した」などと
臆面も無く言って見せるのだから。

それ以外にも、日本国内から配信される猫動画が
YouTubeの再生回数でギネス世界記録に認定されることを予見するかのような科白を
挿入したりと、枚挙にいとまがない。


ただ、そうした端々の興味を別にすれば、
物語自体はひたすら過去作の再生産、セルフパロディーの如きであり
新奇さには欠ける。

饒舌な科白と、冗長なアクションシーンが繰り返され、
何れも既視感が満載で、観ていて興味がすっと冷めてしまう。


もっともその気配は冒頭から有ったのだ。

『ネオ』はゲームの開発者との設定で、
過去に〔マトリックス3部作〕をヒットさせた実績があるとの導入部。

新ゲームの〔バイナリー〕を開発中にかかわらず
親会社の「ワーナー・ブラザーズ」からの圧力で
マトリックス4〕の制作を強制される、とか、
まったくもって本作のプリプロダクションを垣間見ているかのよう。

あまつさえ彼の同僚に
〔リブート〕や〔リメイク〕は無いな、
でもこれが上手く行けば〔マトリックス5〕も作れるかも、などと
しれっと会話をさせているのだから。

サイバー×フィジカルの構造が、
サイバー×サイバーの入れ子となり、
観る側は最早、苦笑いするしかない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆。


Alien〕の、一連の前日譚での
リドリー・スコット』の失策を再び見ているような居心地の悪さ。

もっとも信者の方たちの評価は
真逆になろう、熱狂的に迎え入れるのだろうけど。