封切り三日目。
席数489の【SCREEN12】の入りは五割ほど。
〔マトリックス三部作〕の公開から今年で十八年。
世界は変容し、勿論、ショウビズに於いても例外ではない。
「#MeToo」や「多様性」が盛んに言われ、
それが作品にも反映される。
その間に
シリーズ監督の『ウォシャウスキー兄弟』も
性適合手術を受け『ウォシャウスキー姉妹』となった。
当然のように本作でも、それらが反映された結末になっているのは
何とも興味深い。
一方、変わらぬものもある。
件の姉妹と『キアヌ・リーブス』の日本への偏愛であり、
それらは作中でも如何なく発揮される。
外見だけは新幹線、客席の造りはまるっきりの西洋風列車の中に突如移動し、
富士山を背景に走行しながら「Tokyoへ移動した」などと
臆面も無く言って見せるのだから。
それ以外にも、日本国内から配信される猫動画が
YouTubeの再生回数でギネス世界記録に認定されることを予見するかのような科白を
挿入したりと、枚挙にいとまがない。
ただ、そうした端々の興味を別にすれば、
物語自体はひたすら過去作の再生産、セルフパロディーの如きであり
新奇さには欠ける。
饒舌な科白と、冗長なアクションシーンが繰り返され、
何れも既視感が満載で、観ていて興味がすっと冷めてしまう。
もっともその気配は冒頭から有ったのだ。
『ネオ』はゲームの開発者との設定で、
過去に〔マトリックス3部作〕をヒットさせた実績があるとの導入部。
新ゲームの〔バイナリー〕を開発中にかかわらず
親会社の「ワーナー・ブラザーズ」からの圧力で
〔マトリックス4〕の制作を強制される、とか、
まったくもって本作のプリプロダクションを垣間見ているかのよう。
あまつさえ彼の同僚に
〔リブート〕や〔リメイク〕は無いな、
でもこれが上手く行けば〔マトリックス5〕も作れるかも、などと
しれっと会話をさせているのだから。
サイバー×フィジカルの構造が、
サイバー×サイバーの入れ子となり、
観る側は最早、苦笑いするしかない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆。
〔Alien〕の、一連の前日譚での
『リドリー・スコット』の失策を再び見ているような居心地の悪さ。
もっとも信者の方たちの評価は
真逆になろう、熱狂的に迎え入れるのだろうけど。