RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

カツベン!@TOHOシネマズ錦糸町 2019年12月14日(土)

封切り二日目。

席数114の【SCREEN6】は満員の盛況。

やはり『周防』ブランドは大したものだとおもわせる入りと客層。
老若男女幅広い。

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エンドロールに流れる配役陣の豪華さに驚かされる。

『シャーロット・ケイト・フォックス』『上白石萌音
城田優』『草刈民代』あたりだが、
一体どこに出ていたんだろうと一瞬首を捻るも
なるほど、劇中で上映される無声映画内での出演なのね。

このためだけにたぶん何本かを別撮りしたのだろうけど
随分と贅沢だ。

それだけイマイマ、同監督にはバリューがあることの証左だろう。


日本での活動弁士の活躍は
1900年前後から第二次大戦前までの短い間、
ある種「あだ花」だけれど
エンドロールで流される〔雄呂血〕のような傑作が出来たのも
シバリがあった故かもしれないし。

そういった古の作品への偏愛が溢れまくっているのが
画面の隅々からもふんぷんと香る。


物語りは、幼い頃に憧れた活動弁士を夢見る青年『俊太郎(成田凌)』を狂言回しに
初恋の相手で女優を目指す『梅子(黒島結菜)』との再会を絡めつつ
かなりのドタバタが繰り広げられる。


脚本は練られているし、小道具の使い方が上手いのも流石。

が、全体として見た時に、小さく纏り過ぎて
想定外の展開と面白味が無い。

館内でも散発的に笑いは起こるものの
それが爆笑の連鎖に繋がることはなくかなり欲求不満。

なまじ手練れの役者を揃えているがために、
破綻が無いのは良いがこじんまりし過ぎる難あり。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


5年振りの新作は手間が掛かっているのは理解できるけど、
それが全体の面白さに直結しているかと言えば
首を傾げてしまう。

屍人荘の殺人@TOHOシネマズ錦糸町 2019年12月14日(土)

封切り二日目。

席数349の【SCREEN9】の入りは四割ほど。

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ある「出来事」により外界から隔絶させられてしまった湖畔のペンション「紫湛荘」で
連続殺人が発生する。

ただそこは一年前にも人が一人行方不明になっているいわくつきの場所。


その二つの謎に挑むのは「神紅大学」ミステリー愛好会の自称有能な探偵
明智中村倫也)』とワトソン役の『葉村(神木隆之介)』そして
警察に協力することもあるホントに有能な探偵『剣崎比留子(浜辺美波)』。

『葉村』以外の二人は極めてエキセントリックな造形。
加えて『明智』は推理能力そのものに疑念が残る。

一番まともに見える『葉村』は至って凡人。
推理小説マニアであっても、犯人を当てたことが一度もないほどの。


この三人が繰り返しのギャグに塗れながら真相解明に動く。

ところが、物語のかなり早い段階で
犯人(?)と動機の検討はおおよそついてしまう。

ただ実行手段については、終盤の説明シーンを見ないと分らなかったけど。


じゃあ見所は何処かと言えば『浜辺美波』の可愛さと、
ペンションを孤絶させた「出来事」がなぜ起きたのかの二点に絞られ、
特に後者は最後のシーンでその背景が明かされる。

元々斬新な手法と感心はしていたものの、
それを見た途端に、推理云々ではなく
今まで見て来た世界そのものがガラガラと崩れてしまうのだ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


多くの笑いどころを抜きにしても、
あまりに鮮やかなひっくり返し方。

この秀逸な設定であれば
国内ミステリーランキング4冠の達成にも得心が行く。

ドクター・スリープ@109シネマズ川崎 2019年12月10日(火)

封切り十二日目。

席数72の【シアター10】の入りは八割ほど。

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「オーバールックホテル」の惨劇から四十年後、
一緒に逃げ延びた母親も亡くなり
『ダニー(ユアン・マクレガー)』もはや中年、
父親と同じアルコール依存症に苦しみ無為な日々を送っている。

そんな彼が自分と同じ能力を持つ少女『アブラ(カイリー・カラン)』と
彼女をつけ狙う集団の存在を知ったことから
嘗て『ハロラン』が自分にしてくれたように『アブラ』を助ける決意をし
闘いに身を投じる。


{ホラー}嫌いではあるけれど
名画座を含め〔シャイニング〕は劇場で二度観ている。

まぁ傑作だよね、やはり。時代を先取りする幾つもの技術、
役者の演技、数々の演出、映像美と全てを総合して。

ところが『スティーヴン・キング』は
スタンリー・キューブリック』の監督作を気に入らなかったのは有名な話で、
のちに自身でテレビドラマ版を製作しているほど。

ただね原作者の思惑とは別に映画版の素晴らしさに揺るぎはない。
その存在感は圧倒的。


そういった因縁を思い出しながら本作を観る。

そこでは戦いの舞台として、
小説ではラストで既に消失しているハズの
件のホテルが再び選ばれる。

今回の監督『マイク・フラナガン』は
映画と『キング』の二つの小説とで
それなりに折り合いを付けたながら作品化をしているよう。

要はどちらも立てる試み。

映画版のリスペクトもそこかしこに感じられはする、もっとも
同じよう構成のシーンでも『キューブリック』が撮るのと
他の人では、纏っている空気の不穏さが違って感じられるのも事実。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


小説〔シャイニング〕の四十年後を映画版の設定を活用して創った
ハイブリッドの一本として見た方が良いだろう
少なくとも映画の続編とするには当たらない。

“隠れビッチ”やってました。@109シネマズ川崎 2019年12月10日(火)

封切り四日目。

席数89の【シアター8】の入りは三割ほど。

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思わせぶりな態度で男をその気にさせておき
すんでのところでさっと身をかわす。

ご馳走されたりプレゼントされることではなく
ただちやほやされることが目的。

服装や仕草に気を使い常に清純さを装う。

時として危険な目にも遭うけれどそれもスパイスだったり。

そんな女性のことを本作では「ビッチ」と称し、かつ
周囲にその意図を知られることなく、限りなく行為を繰り返すため
「隠れ」の呼称を冠す。


これほどとんでもない人間がホントに居るのかと訝ったら、
『あらいぴろよ』の実体験を綴った漫画が原作らしい。

最初からその気もなく、ゲーム感覚なのだから、
腐っていると言えばよいのか、邪道・外道と表現すればぴったりするのかと
開いた口がふさがらない。

根底にあるのは男性に対する不信、
特に幼い頃に実父から受けたDVなのだと聞かされても
コケにされるのは罪の無い(でも下心はある)男性なのだから
その造形にあまり共感できはしない。


でも一連のエピソードをテンポ良く見せられると
面白いのは間違いない。

加えて主役の『佐久間由衣』のはじけっぷりが凄い。

モデル出身だけあって、すらりとした体形に長身、おまけに小顔。

なのに私生活の場面では太腿をぼりぼりかきながら、
鼻くそをほじりながら電話をしてるんだから随分と思い切った役創り。


そんな「ビッチ」である『荒井ひろみ』が
本当の恋をし真実の愛を見つけ出せるのかが後半部の建て付け。

本人が変わるには幼少時のトラウマをなにがしかで乗り越える必要が。
それをどのような挿話で納得感を出すのかが
制作サイドの手腕が問われるところで、
まずまず印象的な場面を描写するのに成功しているかと。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


冒頭、ご丁寧にエンドロール後も物語りが流されるので
席を立たぬようにとのお節介なテロップ。

そこでの一コマはなるほどタイトルを反映した内容。

監督・脚本の意図はイマイチ見えないけれど、
ホントに必要なシーンだったかなぁ

 

「Portrait」展@Spiral Garden 2019年12月8日(日)

タイトル通り”ポートレイト” 作品を集めた展覧会。

しかし並んでいるのは平面だけにとどまらず、
立体も幾つか。

主催は「ワコールアートセンター」で即売会も兼ねており
プライスもきっちり提示されている。


出展作家は十人ちょっと。

中でも『森村泰昌』のお馴染みのシリーズは
作品そのものよりも、売られ方が面白くて。

『中谷ミチコ』の作品を観るのは昨年の”DOMANI”以来か。
水彩が二点。その中の一点が随分と良い。
価格は「応相談」と書かれていたと思うけど
手が出ないだろうな、おそらく。

あ、あと、{写真}なのにもかかわらず
{絵画}のような趣き表現の『山元彩香』作品にもぐっと来たなぁ。


会期は~12月15日(日) まで。

www.spiral.co.jp

表紙で振り返る 時代を彩った映画スターたち@Bunkamura Gallery 2019年12月8日(日)

キネマ旬報100周年 企画展」とも書かれている。

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タイトル通り、同誌の表紙がパネルにされずらりと並ぶ。
同時にそれは過去からのスターを再確認する場。
物故者も含め懐かしいそれらの顔、顔。

キネ旬ベストテン」についても振り返りのコーナーが。
ただこちらはWeb上で何時でも確認できるので
さほどの有難みはないけれど。

会場の奥には本棚が設置され、
実際の本誌を手に取って見ることができるのも気が利いているし、
スマホを使って楽しむ仕掛けもアリで、
随分と知恵を絞ったものだと感心。

直近で封切られる映画〔カツベン!〕とのコラボも
ちゃっかりあるのも微笑ましい。

会期は~12月11日(水)まで。

www.bunkamura.co.jp

ゴーストマスター@チネチッタ川崎 2019年12月7日(土)

封切り二日目。

席数138の【CINE3】の入りは四割ほど。

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レイティングは「R15+」。

てっきり主演格の『成海璃子』がぺろっと脱ぐのかと思ったら
全然そんなことはなくて、ちえっ、つまらん。

要はホーラーチックなシーンが幾つかかすっているからで
この程度で昨今は鑑賞制限になっちゃうんだ。

オマケに中盤迄はまずまずの展開も後半に差し掛かると
フライヤーの惹句にもある「究極の映画愛。」が溢れすぎて暴走気味、
かなりつまらない作品に堕してしまっているし。


とある廃校で、今しも胸キュン青春映画の撮影が
クランクアップを迎えようとしている。

しかし肝心のシーンがどうにも決まらず
リテイクが繰り返される。

苛立つ出演やスタッフたち。

そんな時に常に鬱憤をぶつけられるのが
助監督の『黒沢明三浦貴大)』。

気持ちの優しい映画オタも、何時かは監督になり
自身の脚本で一本を撮ることを夢見ている。

ただね、おそらくそれは叶わぬだろうと思われる。
だって監督なんて非情さがないとできないもん。
彼は気が弱すぎでしょ、との基本設定。

その時のために推敲を重ねて来た脚本〔ゴーストマスター〕を
出演者からも監督・プロデューサーからも否定され、
憤怒が脚本に憑依し、ついには悪霊と化し暴走する。


底本に在るのは『トビー・フーパー』の〔スペースバンパイア〕。

悪魔のいけにえ〕でもなく〔ポルターガイスト〕でもなくで
同時代に観ている自分的には正直、失笑作品。

それへのオマージュと、幾つかのシーンのコラージュが
作品の核に有ること自体がそもそもダメダメな発想なんじゃ、と
思わぬでもない。


リスペクトする監督の名前をつらつら挙げるのを筆頭に
映画好きなら笑える要素は多々。

一方でスタッフの苦しい生活を語らせたりで
しんみりとさせる挿話も。

第四の壁を(文字通り)打ち破る場面もきっちり用意され
ある意味想定通りの展開でディテイルは奮っていても
肝心のプロットがなぁ、どうにもつまらん。


ホラーの様相を呈しつつもまるっきり怖くはなく、
しからばギャグものへと振り切れもせず。

グロなはずのVFXも妙にキッチュでチープと
全ての面で徹していないの良くなくて。

気ばかりが逸り、足が地についてない状態で
最後まで流してしまっている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆。


TSUTAYA」主催のコンペティションTSUTAYA CREATERS'PROGRAM FILM」で
2016年の準グランプリと聞いている。

過去の受賞作を見ると
2015年に〔嘘を愛する女〕がグランプリ、
同年〔ルームロンダリング〕が準グランプリとなかなかに粒揃い。

それに比すると本作は、やや落ちる鑑賞後感。