RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

菊とギロチン@テアトル新宿 2018年7月29日(日)

封切り四週目。

席数218の標題館の入りは七割ほど。

クラウドファンディングでの制作資金調達も話題だけど
東京ではここだけの単館上映。

で、普段はしないことだけど
やむなく前売り券を、それも1,700円で購入しての訪問。

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そう言えば「テアトル新宿
学生の頃はよく通っていた。

直近は何かとご無沙汰で
30年ぶりくらいかもしれない。

あの頃に比べると、改装もされ
随分と綺麗になっている印象。


おっと閑話休題

映画のハナシをしなくちゃね。


三時間を超える尺も、長さは全く負担には感じない。

若干エピソードを盛り込み過ぎの感はあるけれど
それを凌駕する溢れるチカラをここでは買う。

尤もそれらの寓意にしたって、
日頃の意識の張り方で、琴線にふれたりふれなかったりするわけで、
感じ方は人それぞれだろう。


時は大正時代も末期、関東大震災直後の世情が不安定な頃。

女相撲の一座とテロリスト結社の「ギロチン社」が
ひょんなことから邂逅し幾つかのドラマが生まれる。

勿論、出来事そのものはフィクションであり、
起きた事象は往時らしさがふんぷんとするものの
イマイマにも通じる社会矛盾をたっぷりと包含している。


幾つか挙げてみようか。

女性に対する蔑視やDVの問題。
朝鮮人に対する差別や抑圧の問題。
より大きな力の威を借り理不尽を行使する人々の問題。
大義を前面に立てて庶民を欺く為政の問題。

そして最も大きいのは、ある繁栄の基には
多数の搾取が存在していることだろうか。

現代でも、しょっちゅう取り上げられる事柄ばかりで
観ていてもきりきりと胃が痛くなるばかりだ。


物語の一翼を担う「ギロチン社」は
けして清廉な結社とは言えず、たかりや脅しなど
やっていることは無頼と遜色ない。

女相撲の「玉岩興行」一座も、その構成員は
夫々が過去を抱え、しかし自分を高めようとの志には
ココロを打たれるものがある。

その二つがぶつかった時に、激しい化学変化が生じ
人間の生き方が剥き出しになる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


タイトルは〔菊と刀〕や〔菊とバット〕を意識したものだろうけど
とりわけ前者よりも鋭利さには欠ける、しかし重みのある刃物の切れ味の字面が
ややの気持ち悪さも漂わせる。

一方、「菊」については
主人公の『花菊(木竜麻生)』の気丈さを
十分に表している印象。