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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

人生は小説よりも奇なり@チネチッタ川崎 2016年3月23日(水)

封切り二週目。

席数107の【CINE 1】の入りは二割ほど。


イメージ 1



長年連れ添ったゲイのカップ
『ベン』と『ジョージ』が州法改正で同性婚が可能になったことで
念願の結婚式を挙げる。

しかし、その一部始終をフェイスブックにアップしたことから
勤務先の学校を首になり、失業の憂き目に合う。

ここいら辺、法は整備はされても、
キリスト教の倫理観が色濃く反映される社会構成が
随分と不自由なものに感じられる。

結果、愛着のあるアパートも手放すことになり、
二人は各人の親戚や知り合いの元に身を寄せる。

知古とは言っても、そこは長年の同居人とは勝手が違い、
各々の行く先で、人間関係に小さなさざ波が立つ。


と、此処で、日本人で、且つある程度の本数
映画を観ている人であれば、察しが付く。
これって、〔東京物語〕を底本にしてるんじゃね?

そう思って観れば、シーンとシーンとの間に
風景のカットを幾つか挟むなど、
『小津』っぽい編集も随所に見られる。


冠婚葬祭の席での諍いが、家族の普遍的なマターとして
過去から幾度も取り上げられて来たように、
こんなシチュエーションもやはり
人間らしいドラマの発露として、
カタチを替え繰り返し描かれるのだろう。

中には、
エドワード・ホッパー』の〔ナイトホークス〕を彷彿とさせる
シーンも有り、NYと言う喧騒の大都会での孤独感を感じさせるのに
効果的だったりもする。

ただ、そのようなテーマではあっても、
設定はやはり今っぽい。

それらを通して我々は、また異なる側面の影を見るのだが、
本作に関しては、最後の最後に光明が用意されている。

それは本当に光が溢れる美しく瑞々しいシーン。
老齢のカップルの素晴らしい置き土産にも思える。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


そして実際、主役の二人が身を寄せた先で体験する出来事も
東京物語〕に近似しているのよ。

デフォルメされているし、シュチュエーションの違いはあるにしてもね。