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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密@TOHOシネマズ 渋谷 2015年3月14日(土)

封切り二日目。

席数234の【SCREEN5】の入りは満員の盛況。


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第二次大戦中、独軍が「エニグマ」という暗号を使用しており、
苦難の末に連合国側が解読。
が、それを気取られぬよう、以降の行動も慎重をきした、
程度の知識は元々あった。

しかし、その裏にこんなストーリーがあったなんて知る由もなく、
多分、多くの人にとっても、それくらいのレベルで止まっているだろう。

ただ、それは本作の主人公である天才数学者
アラン・チューリング (ベネディクト・カンバーバッチ) 』
の存在自体が秘匿・評価されていなかったから(と、本作では言っているのだが)
としたら、どうだろう。


チューリング』のエキセントリックな性格も
現代であれば「アスペルガー」と理解され、
それなりの対処を受けていただろうし、
同性愛にしても、勿論、昔から男色を文化として受け入れていた日本は別にして、
キリスト教の倫理観が強く支配する彼の地では、
犯罪として法律で罰せられていたなんて
今回初めて知ったし。

その功績に比して、評価も扱いも異様に低く、
悲劇的な最後を遂げる主人公は、ある意味
身勝手な国家や、自分では如何ともし難い時代に
翻弄されてしまった、と言えなくもない。

ただ、本作では、その辺の事情を
敢えて批判等の精神はぐっと押し込み、
感情移入はさせるものの、結論めいたことは言わずに
ただ淡々と提示するのみである。


それにしても、
解読に到る一連のシークエンスは、頗るスリリングだ。
思うように捗らない作業に加え、周囲の無理解や、
知識の無い権力からの横槍が入り、
ある程度はお約束の側面もありながら、
主人公の側に立ち鑑賞する我々からすれば
憤懣やるかたない感情が突き上げる、上手い造りにはなっている
(その分、成果が挙がった時のカタルシスは大きい)。


おそらく『シャンポリオン』が「ヒエログリフ」を読み解いた時もそうであったろうが、
きっかけになるのは、何気ない会話や出来事からの、実は天啓的な気づき。

ただ、それ以降の展開は、
人間的なドラマを厚くする為の時間配分からだろうか、
やや性急に過ぎ、思考が追いつかないほどのスピードでの描写だったのが
消化不良でちと残念だ。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。


暗号解読の為に主人公が制作するマシーンには
『クリストファー』という名前が付けられる。

物語り自体は『チューリング』の
学生時代、第二次大戦中、そして現代と
三つの視座で語られるのだが、唯一共通して登場するのが
この名前。

その理由を知った時に、観客の側には
熱い感情が込み上げて来るに違いない。