封切り三日目。
席数284の【CINE5】の入りは三割ほど。
エンドロール直前、
本作の原作者『小坂流加』への献辞が示される。
何のこと?と、かなり戸惑う。
事前の知識も無く観に行ったものだから。
調べて分かったのは、彼女こそ
主人公の『茉莉(小松菜奈)』その人であり、
難病である「原発性肺高血圧症」を患い
若くして五年前に逝去したこと。
自身の境遇を仮託してしての
自伝的な一冊であったわけだ。
初版が出されたのが2007年で27歳の時だから
ほぼほぼ、リアルな環境が投影されているのだろう。
もっとも、映画化に於いては
『茉莉』の環境、及び恋愛対象となる『和人(坂口健太郎)』についても
多くの変更が加えられているよう。
その是非は問わないけれど、ストーリーの流れそのものは
かなりスムースな進行と感じる。
二人の間の感情の変転、親密になる過程や
それまでの戸惑いも自然だ。
一方、多くある{難病モノ}との違いはさほど感じられず、
目新しさはほぼほぼない。
唯一、『和人』の再生に纏わるエピソードに
秀逸さを感じるくらいか。
主人公の周囲は、皆々が所謂、良いヒトで固められ、
害を及ぼすことはない。
逆にそれが為の葛藤は、おそらく本人にしか判らないことで、
観ている側からは隔靴掻痒の感がある。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
主役の二人をはじめ、家族を主とする周囲にも
手堅い役者陣を配し、安心して観ていられる良さがある。
泣きのシーンが多い『小松菜奈』の演技も
特筆できる表現だった。