RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ジョジョ・ラビット@109シネマズ二子玉川 2020年1月18日(土)

封切り二日目。

席数101の【シアター8】は満員の盛況。

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オープニングで『The Beatles』の〔I Want To Hold Your Hand〕が流れ
エンディングでは『David Bowie』の〔Heroes〕が。

実はこの二曲が本作の趣旨を端的に現していて、
巧い選曲だなぁと思わず膝を叩く。


舞台は第二次大戦末期の独逸ベルリン。

既に独軍の敗色は濃厚も一般市民にはまだ知らされてはいない。
ただ、食糧の配給が少なくなって来ていることで、
薄々と勘づいているかもしれないが。

主人公は母親と二人で暮らす「ヒトラーユーゲント」に憧れる
十歳になりたての少年『ジョジョ・ベッツラー』。

総統に酔心するあまり自身にしか見えない空想の友人『アドルフ・ヒトラー』を創り出し
折に触れ会話にふけってしまうほど。

当時の子供であればプロパガンダに洗脳され好戦的になるのは自明。
しかし心優しい『ジョジョ』は「ユーゲント」育成のキャンプの場で兎を殺すことができず
『ラビット』=「臆病者」との有り難くない渾名を付けられてしまう。

そんな彼が、母親の『ロージースカーレット・ヨハンソン)』が
自宅秘かに匿っていたユダヤ人少女『エルサ(トーマシン・マッケンジー)』と鉢合わせしたことから
いやがおうにもナチズムの正否に向き合うことになる。


ユーモアを前面に出した反戦映画は数多くあれど
本作は出色。

親子の会話の場、キャンプでの情景、毎日の暮らし、
主人公達が窮地に陥った時、戦闘の場面にもそれは及び、
笑いが途切れることはない。

いや、全編を通しても柔らかさを多く感じ、
ことさらスリラーを意識したBGMが流れるシーンでさえ
ほわんとした空気に包まれ可笑しみがこぼれ出す印象。

もっともそんな中にも危険を示すサインはきちんと潜ませており、
例えばぶら下がっている靴が死を意味することに早々に気づくと
以降は靴がアップになる度に、ドキリとする仕掛けなどは
かなり練られた脚本の妙。

靴紐も結べない、母親に依存しきっていた幼い少年が
『エルサ』との出会いと敗戦というイニシエーションを経て
人間として成長する過程を描いた一本でもある。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


真珠の耳飾りの少女』の時は十九歳だった『スカーレット・ヨハンソン』も
当年三十五歳。

直近では〔アベンジャーズ〕での活躍が目立つけれど
自由奔放でそれでいて愛情深い母親を演じた
ここでの彼女の方が好きだなぁ。