RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

KANO 1931 海の向こうの甲子園@チネチッタ川崎 2015年2月1日(日)

封切り二週目。
席数138の【CINE 3】の入りは満員。

客層は随分と幅広く、
幼子を連れたお母さんまでいる。


イメージ 1



鑑賞しているうちに、次第に不穏な気持ちにさせられてしまう。
その内に、「八紘一宇」とか「五族協和」といった昔の言葉が亡霊のように
立ち現れてくるのではないかと。

事実後半になって、それに類した発言が、ある日本人の口からされる。
多くの人は、感動的な言葉として捉えるのではないか。

台湾制作の作品であり、監督を初めとするスタッフ陣が
台湾出身者で固められていなければ、非常なきな臭さを感じてしまったろう
(とは言っても、出資元まではわからないけど)。


本編では、それまで公式には一勝もしたことがない「嘉義農林」が
新任の監督『近藤兵太郎(永瀬正敏)』の着任により躍進を開始し、
ついには甲子園大会に出場するまでが描かれる。

が、これもまた不思議なコトに、幾つかの親日的なエピソード、
例えば「嘉南大圳」が建設されることは同時並行なのだが、
一方、やはり同時期の「霧社事件」についてはふれられもしない。
友好的な挿話だけが、積み重なって行く。

ましてや前者は日本的な食糧増産施策の一端なのだから、
ホントに当地にとって必要であったかどうか。


勿論、偏見を抱く人々は繰り返し現れ、
度毎に、しつこさを感じない程度に、
それを打ち消す熱い反撃がある。

快哉を叫ぶ場面であるかもしれない。


テンポは非常に良いので、
三時間を越える長尺も全く気にはならない。

一方、現地の人達に日本語を話させているので、
科白が聞き取り辛い恨みはある。


そういった点を勘案しても、
手に汗握らせ、そして泣かせる映画としての資質は十分に備えている。

野球を好きなコトが大事なのであり、
人種なんかは関係ないという『近藤』の思いには
多くの人が共感する。
物事を達成するために民族を超えて一体となるのは美しいと
素直に思えるからだろう。

逆に言えば、今の我々はそうでない事例や、建前だけのものを
いかに沢山見ていることと表裏一体なわけだが。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


この作品で、仄かに想いを通わせる従姉弟同士が自転車に乗るシーンがある。
明日に向かって撃て!〕でもそうだったけど、
こういったシチュエーションって、ホント印象に残る。

観ているこちら側まで、切ない気持ちになってしまう。