RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

繕い裁つ人@109シネマズ川崎 2015年2月1日(日)

封切り二日目。
席数121の【シアター5】の入りは満員の盛況。

客層は中高年の夫婦連れ、同年代の女性の二人連れ多し。


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原作は『池辺葵』のコミックで、

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この通り、既読(おっと、最新刊がまだだった)。

独特の静謐な世界観と、人物の造形と関係が
この先どう発展して行くんだろうと、興味は尽きない。


さて映画である。

先代の衣鉢を継ぎ、残された洋裁店を護ることと、
地域の人達に寄り添うように創られた一点モノの服を
着る人達が亡くなるまでリフォームし続けていくことを
矜持として生きて来た『南市江(中谷美紀)』だが、
突然現れた百貨店のバイヤー『藤井(三浦貴大)』により
その単調な生活に小波が立つ。

画面は時として眩しい光が刺し込み、
静謐な原作の雰囲気を上手く再現している。

直近公開された幾つかの作品からも判るように
監督の『三島有紀子』の手腕はたいしたものだと唸ってしまう。


製作者としては一流だが、
生活者としては破綻している主人公の人となりも
元々はないエピソードを紡ぐことで、
印象に残るように表現される。

また『中谷美紀』も、それを頗る上手く演じている。


舞台を神戸としている。

如何にも らしい 人達が住んでいそうで納得感あり。
成功の一因だろう。


とは言うものの、不満がないわけではない。

先ずは「南洋裁店」の立地。
街の人達が始終立ち寄るサロンの様な場であれば、
あんな坂を上りきった場所にぽつんと在ってはいけないだろう。
あくまでも、町家に在ってこそだろう。
洋館であることの是非と、その構造が後々の演出に必要なことはわかるにしても、だ。

次に、洋服フェチである『藤井』のエピソードが少なく、印象に残るものがない。
本編ではある重要な登場人物の口から、それは語られるのだが、
鮮烈さには欠けてしまう。

そして、これが最も重要な要素、「夜会」の描写が
やはり危惧していた通り、そうとう嘘くさくなってしまった。
原作でも、かなりムリをしている印象はあり、
実写になれば、その虚構性はより露呈してしまうんだが、
これを外すと物語が成立しないからなぁ。
つくづく、難しいものだと思う。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


そのような点を差し引いても、
作品としては良くできている。

何よりも特有の世界観の表現力と、
二人の主要人物が今までの殻から抜け出し、
飛翔することを仄めかす語り口は素晴らしい。