封切り二日目。
席数118の【シアター3】の入りは五割ほど。
自身が監督/脚本を務めた
〔ぼくたちの家族(2014年)〕
〔茜色に焼かれる(2021年)〕
〔アジアの天使(2021年)〕で、
家族のありようを描いてきた『石井裕也』が
ここでもやや風変りなカタチを提示。
コメディタッチを風味付け程度に盛り込みながら展開される独特の流れは
本作でもいかんなく発揮。
もっともその前に、更に印象的な
導入部があるのだが。
『折村花子(松岡茉優)』は、
名前を検索すればウイキペディアにも表示される
一部では名の通った映画監督。
企画・監督の新作〔消えた女〕は、
自分の家族の物語。
しかし、その制作にあたって、
プロデューサーや助監督と衝突を繰り返し、
ついには全てを体よく奪われてしまう。
世間、あるいは会社あるあるも、
伏線として彼女を振り回す
業界の慣習やディテールへの意味付けは
当初から仕組まれた罠であったよう。
憤懣やるかたない『花子』は、
自身の家族を使い〔消えた女〕を撮ろうとするも、
事態は期待したとは異なる方向に転がり出す。
赤い服を着て〔消えた女〕=彼女の母親が出て行った理由。
その原因と思われる父親が自暴自棄になったわけ。
主人公が赤色にこだわるようになった原体験。
そうしたことがすべて明らかになり、離れ離れになった家族は
再び絆を取り戻す。
とは言え、1,500万円との金額が頻出し
それに振り回される主要な三人の登場人物。
この共通項には唐突感を覚え、
首を傾げる側面はあるものの
父親がおかされた病の伏線もあり、
最後にはハートウォーミングな世界が現出。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
業界のあり様を描いた強烈な前半部に比べれば
後半部はややステレオタイプな展開。
とりわけコメディチックな演出は
空回りをしているよう。
が、それを補って余りあるのが
役者陣のとりわけ『松岡茉優』の素晴らしさ。
硬軟取り混ぜての演技の柔軟性は
〔勝手にふるえてろ(2017年)〕以来の出色の出来。