RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

スクロール SCROLL@TOHOシネマズ日比谷 2023年2月5日(日)

封切り三日目。

席数98の【SCREEN2】の入りは七割ほど。

 

 

青春の蹉跌と再生を描いた群像劇は多い。

直ぐにでも思い出せる近作は、
〔ちょっと今から仕事やめてくる(2017年)〕
〔明け方の若者たち(2021年)〕
〔花束みたいな恋をした(2021年)〕
あたり。

仕事や恋愛、またはその両方で
悩み躓き立ち直る。

本作はとりわけ、先の二作品と
ハイブリッドのようなテイストを感じる。

が、仕上がりはと言えば、相当に劣後するとの感想。


『僕(北村匠海)』と『私(古川琴音)』
『ユウスケ(中川大志)』と『菜穂(松岡茉優)』
『森(三河悠冴)』と『ハル(莉子)』
の三組の行く末。

男性は大学の同級生、
『私』と『菜穂』は顔見知りで
『ハル』はアイドルとの設定も、
カップルとしての三組が交差することはない。

互いに影響は及ぼしながらも、
あくまでも単体毎の帰趨が語られる。

自己の能力への疑念や
社会の仕組みへの懐疑も並行して描きつつ、
この時期にとりわけ大きな要素となる
色恋をも取り込む。


物語りは幾つかのチャプターに分解され、
各々で主人公が少しずつ入れ替わりながら進行。

最後にはプロローグに繋がる円環が完成し、
構成自体はなかなか良く出来ている。


とは言え、各人に降りかかる厄災が薄っぺらく
半分以上は自己責任のようにも見え、あまり得心できぬのが難点。

『僕』と上司の対立は、上司の側だけに問題がある設定も、
本当にそうなのか。
社内の陰口だけでパワハラの片鱗を見せる処理が、ピンと来ない一因。
死の選択に繋がる背景に、納得できる説明が欠けていることも含め。

また『ユウスケ』の女性関係の醜聞は、
普通の会社でこうした事件を起こせば、九分九厘同じ職場には居られるだろうとの、
ほぼほぼクズ男に近い素行。

共に共感できぬ人物像が提示されることと、
意図的な編集と思われる独特の間が
観ていて居心地を悪くさせる大きな要因。

最終的には団円に持ち込まれるも、
強引な展開で唐突感もあり、頷けない。

馴染みの飲み屋の突然の閉店も取って付けた様で、
青春の終わりのメタファーとも思われるが
蛇足のエピソードにしか見えぬ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


好きな女優さん二人の鑑賞が主目的も、
活かしたかがイマイチで残念。


原作は『橋爪駿輝』の連作短編小説とのことだが、
素材として調理した映像化作品と見た方が良さそう。

原作と違う(だから良くない)との議論は何時ものことながら当てはまらず、
あくまでも脚本の出来の良し悪しに帰すべきだろう。