RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

TANG タング@109シネマズ川崎 2022年8月11日(木)

本日初日。

席数172の【シアター4】の入りは八割ほど。

 

 

監督の『三木孝浩』は原作ありモノ、
とりわけ少女漫画を底本にした映画化については
そつなくこなす、所謂「職人」の印象。

直近ではやや異種な、《夏への扉 -キミのいる未来へ-》のように
SFの名作を元にした一本もあり。

とは言え、カテゴリーとしては{恋愛映画}がほぼほぼで
本作のように少し捻った関係性を描くのは《くちびるに歌を(2015年)》以来と
久方ではなからろうか。

あ、次作の《アキラとあきら》も、男女の恋愛ものじゃあなかったか(笑)。

しかし総覧すれば、各作の出来は玉石混交、
良作と駄作の振れ幅が激しい側面もこれあり。

で、まぁ今回、やや不作に振れているかな、との概観。


原作の『Deborah Install』による《A Robot in the Garden》は
イギリスが舞台と聞いている。

それを、日本に移植したらしいが、どうも冒頭のシーンから
何とも言えぬ違和感がある。

宅配用のドローンや自動運転車が行き交う近未来の設定は許容。
アンドロイドが人間と共存、いやどちらかと言えばサーバントして在ることについても。

しかし、西洋的なスタイルをまるっと移植したような、
主人公夫妻の生活環境には決定的に違和感あり。

家宅そのものと、出会いの場となる「庭」についても同様。
もっとも、件の「庭」は、
その設定が必須である理由が、最後のシークエンスで明らかになりはするが。


自分を見失ってしまった青年『健(二宮和也)』が
記憶を失ってしまったロボット『TANG』と出会って以降は
巻き込まれ型のロードムービー

謎の組織が現れたり、『TANG』の生みの親との邂逅があったりと
文字通り奮闘の後、主人公(達)は過去の頚木から解放され再生する。

とは言え、そこまでの過程を構成するパーツが既視感満載で
2015年との比較的最近の出版年から、過去作の影響をどうにも覚えてしまうきらい。


また『二宮』クンの演技も、何時もながらの自然さが無く、
やや『健』の内面を捉え切れていない表現。

とりわけ、前半~中半部については、
それらのウィークポイントが強く出て、
イマイチ物語り世界に没入できない。


ところが、終盤の一連のシークエンスが極めて秀逸。

演技のキレも復活し、幾つかの伏線も綺麗に回収され、
バラ撒かれていたピースが収まる場所にピタリと嵌る。

愛情の存在が心の中を温かくし、
ひたすらな多幸感に包まれる。

ただこれはおそらく、脚本ではなく、
原作の手柄と思えるのだな、未読だけど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


とは言えこれはやはり、イギリスの風景の中で見たかった一本。

とりわけ主人公を、若い頃の『マイケル・J・フォックス』が演じていたら、
素晴らしい作品になったろう、叶わぬ希望ではあるけれど。