RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密@チネチッタ川崎 2020年2月1日(土)

封切り二日目。

席数290の【ACINE4】の入りは九割ほど。

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恒例の謎解きのシークエンスが始まるまでは
随分とやきもきしながら画面を注視していた。

名探偵として登場した『ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)』に
それらしい片鱗がちっとも見えないのが主要因。

関係者の聴取はしながらも、
それが捜査に結び付いているんだかいないんだか。

本当に真相に辿り着けるのか、もしかしたらレッド・ヘリングで
間違った結論を導き出し、爆笑篇として終わるのか?
実際は迷探偵だったりして、との杞憂を孕みつつ。

ところが最後のシークエンスに至って、
驚くほどに鮮やかに過ぎる手並みを披露。


自身がそれほど動き回らずに結論を導き出す探偵には
助手役の『ワトソン』の存在が不可欠。

本作でその任に当たるのが、特異な体質を持った
看護師の『マルタ(アナ・デ・アルマス)』。

彼女の存在なしには(複数の意味で)事件の解決は覚束なかったんじゃと思わせる
狂言廻しとしての役割分担も十分。


推理小説作家でベストセラーを連発、巨額の財を気づいた
『ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)』が
誕生パーティの翌朝に豪邸の書斎で死亡しているのが発見される。

警察は自殺と判断したものの、謎の人物からの依頼で
件の名探偵が捜査に乗り出す。

警察の協力のもと、家族の聴取が進むに連れ、
一人一人が『ハーラン』との相克を抱え、
しかもそれについて偽りの証言をしていることが判って来る。

表面的には藹々とした一族と見えていたのに裏が、とは
本邦でもお馴染みのプロット。


ん?でも待てよこれって『横溝正史』による
金田一耕助』ものと相似かも。

特に、莫大な遺産を残したことで
殺人が連続して起こる〔犬神家の一族〕と。

主要な人物が次々と殺害され
最後は犯人しか残らないほど人が減った段で漸く事実が判明する。

だったらお笑いだなと思っていたら、被害者を極力最小に抑え込む筋立てで
こちらの方が「名」冠すのに相応しい仕上がり。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。


伏線は緻密に張り巡らされ、
それを映像としてさりげなく見せる編集も優れている。

特に、捜査陣には虚偽の証言を、一方の観客には
実際の出来事を見せ、探偵ががミスリードするかもと
ひやひやさせる手法は斬新。


しかもこれらの要素が、原作ありきではなく
監督・脚本の『ライアン・ジョンソン』の頭の中から
全て生み出されたのだというから恐れ入る。

製作をも兼ねている点からも、相当に自信を持って放った一作なのだろう、
無論、それに応えるだけの秀作に仕上がっているは間違いない。