RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ナイル殺人事件@109シネマズ川崎 2022年2月27日(日)

封切り三日目。

席数349の【シアター6】の入りは三割ほど。

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アガサ・クリスティ』の{ミステリー}ものは何冊か読んでいるけれど
〔ナイルに死す〕は未読。

加えて1978年公開の〔ナイル殺人事件〕も未見で
これは、日本公開にあたりエンディングの楽曲が『サンディー』が歌う
〔ミステリー・ナイル〕に差し替えられたことに興醒めした結果で
それ以外に強固な理由など無く。

勿論、以降の〔クリスタル殺人事件(1980年)〕
〔地中海殺人事件(1982年)〕についても同様。

ピーター・ユスティノフ』が演じた『ポアロ』は評判が良かっただけに
随分と子供っぽいことで観なかったんだなぁ、と
今更ながらにも思う。

しかし、そうした偏狭な過去が今回は奏功、
初心な気持ちで最後まで一本を楽しむことができた。

とは言え、犯人もその動機も、船上の最初の事件の時に判ってしまい、
思うに、事前のヒントを与え過ぎだろうと。

なので以降は次々と起こる事件や
「レッド・へリング」の出し方にも驚きながら
謎解きの場面を迎えるのだが、
そこまでの満足度は十分に高い。


ポアロ』を演じた過去の役者の中では
やはり『デヴィッド・スーシェ』にとどめを刺すと思う。

『ジェレミー・ブレット』版の〔シャーロック・ホームズの冒険〕も
見事だったし「グラナダテレビジョン」は素晴らしいと思った次第。

では前作に引き続いた『ケネス・ブラナー』がナシかと言えば
まるっきりそんなことはなく、
新たな像を創り上げたと評価する。

オリエント急行殺人事件(2017年)〕は劇場にこそ行かなかったものの
「WOWOW」で観て、スクリーンで鑑賞しなかったことを痛く後悔した経緯。

それほど監督も脚本も主演俳優にも感心した。当然、彼の多才さにも。

とりわけ、冒頭『ポアロ』の出自や過去、人となり
そして特徴的な口髭をたくわえることになった経緯を語るエピソードの挿入は秀逸。

これはオリジナルの脚色だよねぇ。

ストーリーの本筋にも上手く膾炙して、
今回のテーマである様々な愛情の発露に厚みを持たせる上々の工夫。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


本作は先の一本の続編で、
同じ人物が登場し鍵となる役回りを持たされる。

結局は悲劇に終わる幕切れも、
それゆえ、殊の外心に残る。

推理の鮮やかさもさることながら、
人間ドラマの部分でも重厚な描写が素晴らしい。