封切り三日目。
席数246の【シアター1】は一席おきの案内なので
実質135席ほど。
それがほぼほぼ満員の盛況。
原作は共に未読も、
そのトリックがあまり映像向けでないことから
「whodunit」よりも「whydunit」に、
また異色の相棒誕生の経緯と、そのハレーションが起こす化学反応の描写に
力点が置かれていた前作。
翻って今回は、いわくありげな登場人物を更に増やし、
それに有名どころを配する、red herringをより多くする造り。
共に制作サイドの腐心の後が見え隠れ。
とある殺人事件に関する情報提供が捜査本部に寄せられる。
その内容を信憑性ありと判断した捜査陣は、
「あの男」を呼び寄せる。
何故なら次の事件が起こると指定されたのは
またあの「ホテル・コルテシア東京」。
ならば名指しされるのは
『新田浩介(木村拓哉) 』以外にはありえない(笑)。
前回は指導役としてアサインされた『山岸尚美(長澤まさみ)』は
フロントクラークからコンシェルジュとなっており、
直截的には協力が難しい立場。
にもかかわらず、ずぶずぶと渦中に巻き込まれてしまうのは、
根っからの直情さに加え、客を第一に考えるスタンス、
或いは『新田』に寄せる思いもあるのかも。
ともあれ、この一風変わったバディの掛け合いの妙は健在で、
中には前作のエピソードを引用した場面も多々。
しかしそれを知らずとも面白さが損なわれることは無し。
顧客第一主義のホテル側と、事件を未然に防ぎたい
(且つ、犯人の逮捕もしたい)警察側と、
相反に見えながらも帰結は同一の目標が
次第に融合して行く様は観ていて心地良い。
トリックも動機も手法も二重の構造を構えており、
細かい点はほぼほぼ予測できたものの、
肝心の「誰が」の部分では予想もできぬ結末を提示され驚愕。
もっとも、逆に「何故」の部分では
後ろ付けが弱い印象で、これを両立させるのは至難だなと思ったり。
小さなものから大きなものまで、
伏線もしっかりと回収され、
観終わった後には間然とした気持ちが立ち上がる。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
〔マスカレード・ホテル〕のラストシーンでは、
既に今回作の予告は示されていたわけで、
本作の大団円後の科白にも、
同様の意図が込められていると見るのが妥当。
ただ、原作は未だ刊行されておらず
(〔マスカレード・イブ〕は前日譚)、
どのような展開に持っていくのか?
マーケティング的な興味も尽きない。