封切り二日目。
席数244の【CINE6】は一席置きの案内で実質122席。
その八割は埋まっている。
ちょっと前の大作主義全盛期であれば
決して俎上に乗ることのなかった
小品に近い脚本を丁寧に拾い上げ作品化する「A24」。
過去に観た中でも〔ルーム〕〔レディ・バード〕等、良質だし
興業的にも成功した作品もあれば、
〔ヘレディタリー/継承〕〔ミッドサマー〕のように毀誉褒貶の激しいもの、
或いはその他の多くは死屍累々。
ホントにやってイケてるんかい?と
他人事ながら心配になる。
まぁ、好きな作品が多いので、個人的には
何とか潰れずに頑張って欲しいと思っているのだが。
本作の舞台は1990年代半ばのLA。
主人公の少年は13歳との設定なので、
当時の自分よりも二十近く若い感じか。
でもねぇ、『スティーヴィー(サニー・スリッチ)』の背伸びをしたい気持ち、
妙に共感する。
これはある程度、歳を経た人なら共通して覚える感想じゃないか。
シングルマザーの母親は優しいものの、再婚を夢見、
男を宅内に連れ込んだりする。
歳の離れた兄が幼い頃はもっと激しかったらしいが、
その兄の『イアン(ルーカス・ヘッジズ)』はなにかにつけ暴力を振るう。
経済的な困窮はないものの、なんとなく窮屈な日常。
そんな折に、新たに始めたスケボーで
何人かの仲間ができたことで、今までとは違う世界を垣間見る。
もっともそこはアメリカのこともあり、
しでかしてしまうことはかなり強烈。
喫煙、飲酒に始まりドラッグ、性行為ととどまることがない
(だから「PG12」に指定なのね)。
言葉使いや素行も悪びれて行く中で、しかし幾つかの事件が起こり、
自身の分を、また家族の情愛と真の友情を知ることになる。
九十分弱の短尺ゆえ、重ねられるエピソードはさほど多くはなく、
『スティーヴィー』の抱える鬱屈や、急激に堕ちて行く背景は
ちと説明不足か。
それでも、少しだけ大人の世界に憬れるのは
誰しも覚えのあること、
青年への階段を昇るための通過儀礼のようなもの。
主人公に自己を重ねることで、呼び起こされた記憶に
コトの大小の差はあれ懐かしさを重ねてしまう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
「A24」の多くの作品では
最後の最後で観客に解釈を委ねる描写が有りがち。
余韻が残る側面もあれば、尻切れトンボに受け取られる場合もこれあり。
本作は、自分としては、前者の良い意味に取ったが。