RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

mid90s ミッドナインティーズ@チネチッタ川崎  2020年9月5日(土)

封切り二日目。

席数244の【CINE6】は一席置きの案内で実質122席。
その八割は埋まっている。

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ちょっと前の大作主義全盛期であれば
決して俎上に乗ることのなかった
小品に近い脚本を丁寧に拾い上げ作品化する「A24」。

過去に観た中でも〔ルーム〕〔レディ・バード〕等、良質だし
興業的にも成功した作品もあれば、
〔ヘレディタリー/継承〕〔ミッドサマー〕のように毀誉褒貶の激しいもの、
或いはその他の多くは死屍累々。

ホントにやってイケてるんかい?と
他人事ながら心配になる。

まぁ、好きな作品が多いので、個人的には
何とか潰れずに頑張って欲しいと思っているのだが。


本作の舞台は1990年代半ばのLA。

主人公の少年は13歳との設定なので、
当時の自分よりも二十近く若い感じか。

でもねぇ、『スティーヴィー(サニー・スリッチ)』の背伸びをしたい気持ち、
妙に共感する。

これはある程度、歳を経た人なら共通して覚える感想じゃないか。


シングルマザーの母親は優しいものの、再婚を夢見、
男を宅内に連れ込んだりする。

歳の離れた兄が幼い頃はもっと激しかったらしいが、
その兄の『イアン(ルーカス・ヘッジズ)』はなにかにつけ暴力を振るう。

経済的な困窮はないものの、なんとなく窮屈な日常。


そんな折に、新たに始めたスケボーで
何人かの仲間ができたことで、今までとは違う世界を垣間見る。

もっともそこはアメリカのこともあり、
しでかしてしまうことはかなり強烈。

喫煙、飲酒に始まりドラッグ、性行為ととどまることがない
(だから「PG12」に指定なのね)。

言葉使いや素行も悪びれて行く中で、しかし幾つかの事件が起こり、
自身の分を、また家族の情愛と真の友情を知ることになる。


九十分弱の短尺ゆえ、重ねられるエピソードはさほど多くはなく、
『スティーヴィー』の抱える鬱屈や、急激に堕ちて行く背景は
ちと説明不足か。

それでも、少しだけ大人の世界に憬れるのは
誰しも覚えのあること、
青年への階段を昇るための通過儀礼のようなもの。

主人公に自己を重ねることで、呼び起こされた記憶に
コトの大小の差はあれ懐かしさを重ねてしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


「A24」の多くの作品では
最後の最後で観客に解釈を委ねる描写が有りがち。

余韻が残る側面もあれば、尻切れトンボに受け取られる場合もこれあり。

本作は、自分としては、前者の良い意味に取ったが。