優秀賞七名、佳作十四名の作品が並ぶ。
今回は例年にも増して身近な題材に想を得た作品が多い印象。
代表例としては
『江口那津子』の〔Dialogue〕。
十年前にアルツハイマー型認知症と診断された彼女の母親、
そして以前母娘で通った祖父母の家の在る街を四十年振りにおとなう行為、
幼い頃に撮られた写真。
そういったものが過去の記憶と今を繋ぐように壁面に貼られいる。
思い出としては掬い出せなくても、心の奥底には
往時の気持ちがまごうかたなくしまわれているに違いない。
『田島顯』の〔空を見ているものたち〕は別の意味で面白い。
「アメダス」に代表される、全国に点在する気象観測点の装置を追ったもの。
写真点数が1,304と記されているってことは、
それって全部じゃん!!
途方もない労力、時間、そして費用に驚くばかり。
『吉田多麻希』の〔Sympathetic Resonance〕は技術応用の功かも。
サーモグラフィックカメラを使い取られた動物たちの写真は
却って野生が際立って見えて来る。
犬なんて、とっても怖いんですけど。
『松下律子』の〔いつか宇宙に還る〕は昔に撮られた写真の
自身が写っている個所だけが細かい粒子になったかの如く離散している。
家族と一緒に自分或いは家の前に立つ自分。
あたかも最初から存在しなかったかのように。
会期は~11月17日(日)まで。
良作揃いなのでオーディエンス賞の投票にも迷ってしまう。