RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

第69回 東京藝術大学卒業・修了作品展@東京都美術館 2021年1月31日(日)

既に終了してしまった展覧会も、
来年のことを勘案し備忘的に記載。

今回の会期は1月29日(金)~2月2日(火)。


会場は

【大学美術館】
【大学構内】
東京都美術館
の計三ヵ所。

事前の入場申し込みが各会場毎に必要で、
予約が可能になるのは一週間前の0時から。

同日昼の12時過ぎにサイトを訪問したところ、
既に【大学美術館】【大学構内】は満員札止め
唯一【東京都美術館】のみ入場可能だったため、
不承不承予約ボタンをぽちりとする。

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当日はQRコードを提示、
検温の後入場。

会場は美術館内の複数個所に分かれているため、
各所で入場時に提示するよう
手首に巻くGiG-BANDを渡される。


順次観て回るも、やはり全体をコンプリート出来ぬフラストレーションが先に立ち、
鑑賞態度がままならぬのは、こちら側の問題で。


来期はコロナが終息し、
心おきなく観て回れる環境が戻ると良いのだがと願いつつ。

哀愁しんでれら@109シネマズ川崎  2021年2月6日(土)

封切り二日目。

席数172の【シアター4】の入りは一割弱。

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TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016」のグランプり受賞作と聞いている。

同企画から過去に映像化された作品は
嘘を愛する女(2015/2018)〕
〔ブルーアワーにぶっ飛ばす(2016/2019)〕
ルームロンダリング(2015/2018)〕
〔水上のフライト(2017/2020)〕
〔ゴーストマスター(2016/2019)〕
〔裏アカ(2015/2020)〕
そして本作。
※(受賞年/映画化年)

うち二本は未見も、共通して挙げられるのは
脚本の練り込み不足。

構成されるパーツが浅薄で、
人物造形に膨らみが無いので
全体的にぺらぺらな物語りに収斂する辛さ。

ましてや今回の監督の『渡部亮平』は
3月のライオン〕は兎も角、
ビブリア古書堂の事件手帖〕〔麻雀放浪記2020〕の脚本担当。

かなりの不安を抱えつつ、一方で
所謂、デキル人である『土屋太鳳』の演技も観たくて劇場に向かう。


市役所の児童福祉課に勤める『小春』は
日頃から母親にネグレクトされたり虐待を受けている子供を多く目にし、
しかし、自分にできることは限られ、やりきれない思いを持っている。

その彼女自身も、幼い頃に母親が突然家を出て行ったことが
今でもトラウマに。


そんなある日のこと。夕餉も終わり、父親の晩酌に付き合っていると、
同居する祖父が突然に風呂で倒れ、
慌てて自家用車で病院に運ぶ途中に事故ってしまい、
運転していた父親は飲酒運転で逮捕、
取るものも取り敢えず家に戻ると
家業の自転車店は失火で炎に包まれており、消火後あてどなく十年来の恋人を尋ねると、
なんとびっくり職場の先輩と不倫の真っ最中。

一夜にして全てを失う不幸のドミノ倒しの連鎖。
よくまぁこれだけをことを考え付き、冒頭の十数分に押し込めたなと、
先ずは感心。


しかしその後の彼女はと言えば、捨てる神あれば拾う神あり。

警報が鳴り、遮断機の下りた踏切で
一人の男を助けたら、それが個人病院の経営者。

礼をしたいからと名刺を渡され、
以降は有り勝ちな流れに。

まぁここで、「救急車呼べよ」とか「緊急停止ボタン押せよ」との
突っ込みはあるものの、気が動転していたから、とか
それが無いと話が進まないよね、との思惑もあり、まぁまぁ善しとしておこう。


知り合った開業医の『大悟(田中圭)』は妻に先立たれ
八歳の娘を独りで育てるシングルファーザー。

気立ての良い『小春』を気に入り、娘の母親も必要と思っていたことから
とんとん拍子に話は進み、結婚へ。

瀟洒な屋敷で専業主婦となり、
夫と娘にも囲まれ、幸せを享受するはずだったのに、ところが
オハナシは予想だにしなかった転調を迎える。


ここで『小春』の過去はまだしも、
『大悟』も幼い頃に辛い体験をしたことはおいおい語られれるも、
そのエピソードはどうにも弱い。

それだけであの人格が構成されるとしたら、
世間の人々はほぼほぼサイコパスになっちゃうんじゃ?と。

娘の『ヒカリ』の行動についても同様で。
甘やかされて育ったからとか、母性の喪失があったとしても
なかなか理解に苦しむ性格の造形。


加えてタイトルに捕われ過ぎた映像や科白の数々。
無理に持ち出さなくても十分に意図は伝わるのに、
却って違和感を醸す結果に陥っている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


求められる母性と現実とのギャップに苦しむ主人公の描写は鬼気迫るものがありつつ
追い詰められていく過程のエピソードがどうにも軽め。

『大悟』が娘を過度に溺愛する様子も含め、
何れも過去体験から善き親であろうと自らを追い込んでしまう成り行きは共通ながら
やはり唐突さを感じてしまう。


「モンペア」のハナシなのか
虐待の与える影響の提起なのか、それとも
純粋にサイコスリラーを目指したのか。

人物造形の軽さに加え、そもそもの設定が曖昧なのも
他の受賞作と同様に気に掛かるところ。

 

平野真美 個展「変身物語 METAMORPHOSES」@3331 Arts Chiyoda 2021年1月31日(日)

入場時の検温等は無いものの、
入館証への記入は必要。


さて標題展、

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Webページには~2月22日(月)迄の会期延長の告知が踊っている。

掲示されている解説を読めば
五年前に亡くなった愛犬は
荼毘にはふしたものの納骨はせず
骨壺はまだ実家に置かれたまま。

その封を解くことなく、
CTスキャンに掛け、
得られたデータを基に遺骨を硝子や陶器で作成する試み。

元々、筋肉や骨、皮膚すらも作成する手技を持つ作者にとっては
自家薬籠中のことだろう。


しかし、嘗て生きていた犬を再生するに近い作業は
その過程そのものが一種の弔いであるに違いない。

記憶が途切れぬことは、
対象が何時までも二度目の死を迎えぬ為の心構えなのだから。

ヤクザと家族TheFamily@TOHOシネマズ錦糸町 オリナス 2021年1月29日(土)

封切り二日目。

席数172の【SCREEN1】の入りは七割ほど。

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1999年-2005年-2019年の三つの時代を通して、
義理と人情を重んじる任侠団体一家の盛衰が、
その構成員である一人の男を軸に語られる。

恫喝や得物を使った暴力シーンはありはするものの、
例えば〔アウトレイジ〕などと比べれば遙かに過少。

抑えた描写をメインに人間の関係性の機微を情緒たっぷりに味あわせることが
本作の主線。

なのできったはったの大立ち回りや外連味を期待すると
肩透かしを喰った気になるかも。


「暴対法」の施行と地方自治体の条例により
所謂「暴力団員」の生活は、憲法が保障する基本的人権とのせめぎ合い。

公共サービスですら、約款に「反社会的勢力の排除」はうたわれており、
言ってみれば、組事務所には電気さえ供給されぬ建て前。

「最低限の生活も送れないの?」との疑問には
「だったら(組織を)抜ければいいじゃん」が法の回答で
それは本作中でも触れられている通り。

もっとも抜けたとしても、社会の目は何時までも厳しい。


にもかかわらず勢力を伸ばす一群も厳然として存在するわけで、
鶴田浩二』の〔傷だらけの人生〕じゃあないけれど
「筋の通らぬことばかり」で「どこに男の夢がある」のか判らぬイマイマの世相。

ただ真っ当に生きることの選択が難しく、
災いが家族や係累にまで及ぶのは、
本作で扱われている運命共同体に限ったことではない。

コロナの感染だけでも、似たような仕打ちは行われており、
どうにも世間と言うのは根っから不寛容なものなのかも。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


制作サイドにしたって、反社勢力を肯定しているのでは当然無いわけで、
あくまでも一つの類型として表象しているに過ぎないだろう。

暴力や陰謀で物事を解決するのではない社会こそが理想、
同様にいわれない誹謗中傷やゴシップを面白半分に消費しない世間も同様か。

花束みたいな恋をした@TOHOシネマズ錦糸町 楽天地 2021年1月29日(土)

封切り二日目。

席数349の【SCREEN9】の入りは二割ほど。

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役どころとはいえ『有村架純』といちゃいちゃできるなんて
なんて羨ましいんだ!『菅田将暉』とやっかみながら劇場に足を向ける。

しかしストーリーが進むにつれ
漫然と観ることが辛いほど
胸を締め付けられてしまった。


何となれば、この一連の流れは
三十年ほども前に自分も経験したことだったから。

勿論、こんなに美男美女のカップルではないし(笑)、
好みがここまで合致した相手ではなかったけれど。


趣味や嗜好がぴったり合う二人が
ボーイ・ミーツ・ガール宜しくひょんなことで出会い恋に落ち
同棲をしつつもやがて行き違いが生じ分かれてしまう。

どの時代でもどんな場所でも、ごくごくありきたりにある恋愛模様

けれど自分の記憶に重ね合わせると
それだけでもう切なさがせり上がって来る。


行き違いが生じたきっかけは、
やはり仕事の多忙さだったか。

でもそれ以前から少しづつ、
考え方や望む方向性に乖離が生じていたのではなかったか。

今となっては、ある意味
必然の帰結だったと思わぬでもない。

そして後悔もしていない、ただ記憶だけが残っている。


おっといけねぇ、年寄りの繰り言になってしまった。


本作では主人公達が共に過ごした五年間を
印象的なエピソードを散りばめ乍ら
しかし軟らかい景色を背景に描き出す。

あくまでもオハナシの世界でありながらも
妙に郷愁を感じてしまうのはそのせいか。

誰でもが経験のある会話やシーンが
絶妙の配分で組み込まれる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


そして二人の別れの場面の描き方もまた鮮やか。

まだ馴れ初めて間もない二人が、
互いのことを知るために会話を重ね
やがて寄り添い、その先は・・・・、と
かいぐりかいぐり繰り返される世の習いを
再びさらっと提示する。

それも次世代を担うであろう『清原果耶』をキャスティングして。

監督の『土井裕泰』も、脚本の『坂元裕二』も
最後まで陶然とする素晴らしい一本に仕上げたと、
文字通り花束を贈りたい。

 

名も無き世界のエンドロール@109シネマズ川崎  2021年1月29日(金)

本日初日。

席数246の【シアター1】の入りは二割弱ほど。

客層は若年~中年の女性が多く、
W主演の男優目当てだろうか。

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推理小説を読んでも、真犯人や動機、トリックについては
ほぼほぼが終幕迄判らない凡悩な自分。

それでも本作では、
かなり早いタイミングでそれらが透けて見えてしまう。

とは言え、不正義を正す為に
(失礼な言い様だが)そこまでするか?との常識的な疑念がふつふつと湧き
自身の予想も半信半疑に思える側面もあり。

ただそれこそが、制作サイド仕掛けた
最大の罠なのかもしれぬが。


エンディングに向けてカードを少しづつオープンして行き
最後にあっと思わせるのは常套手段。

現在の中に過去のエピソードを絡めながら
お話の発端からを描き出す。

鑑賞者をミスリードさせる表現も適宜まぶし、
幾つかの伏線も織り込みつつ展開。

各々のパーツは巧く造り込まれてはいるが、
語り口はあまりスムースとは言えず。

模糊とした表現も一つの手技だろうけど、
何れにしろ我々は幾つものシーンを整理して
再構成する必要がある訳で。


過去の場面は
主要な登場人物である『キダ』『マコト』『ヨッチ』の馴れ初めから。

境遇の似た二人の男児と一人の女児は堅い友情を結び
それが現在へと繋がって行く。

その絆の深さが一つキモになるものの、
鍵となるエピソードに欠けており、
入れ込みの強さが(エンドロール後のシーンも含め)釈然としないのが
一番の脚本の弱さ。


現在の場面では長じた『キダ(岩田剛典)』と『マコト(新田真剣佑)』の二人が
何らかの思惑の基に動いている。

目的や背景は全く不明で、
その二つが明らかになる迄がサスペンス。

ここで幾つかの設定の弱さが露呈する。
とりわけ政治のチカラを強く出し過ぎていることがその最たるもの。

地方行政の端々迄いちいち膾炙できないだろうとの思いは、
特に最後のシークエンスに付いて回る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


まぁ観客を一番困惑させるのは
例によって予告編の作りと本編との乖離に在る訳で。

どれだけ大きな陰謀が動いているのと期待しながら注視しても
一向にその影が見えて来ぬ、どうにも肩透かし。

結末には竜頭蛇尾な思いを持ちつつも、
最初から違った眼鏡を掛けて観ていれば
受け取る印象はもっと違ったかも。

プラットフォーム@チネチッタ川崎  2021年1月29日(金)

封切り初日。

席数284の【CINE5】の入りは一割ちょっと。

まぁ、こんなマイナーな作品は
予告編を見るとか、「IMDb」のレイティングを確認するとか、
評を読んでいるような人しか来ないよねぇ。

ちなみに現時点で、「IMDb」では7.0、
「Metascore」は73なので、なかなかの作品と言えるかも。

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原題の「HOYO」はスペイン語で「穴」の意で合ってるかしら。

これは主人公達が隔離される高層塔を
上下に貫く「穴」として示唆される。


その塔に入れられるのは如何なる人々か?
犯罪者もいるようだし、政治・思想犯も居るのかも。

一方で主人公は、ある権利を得るために
自ら望んで収監される。


さて件の「穴」を通して
一日に一度食事が運ばれて来る。
大きな台座に乗り、上から下へと。

見た目も豪奢なそれはしかし、中途補充されることは無い。

上層階の人々にとっては饗宴、
しかし下層に来る頃にはあらかた食べ尽くされ
口に入れるものは皆無な状態。

また食べ物の隠匿にはペナルティがあり、
貯蔵もままならぬ厳格なルール設定。


一つの階に二人の定員は
公平を期すため(?)一ヶ月に一度
相方はそのまま、フロアの総入れ替えをされる。

上層に入ればラッキーも、
下層では地獄図が。
それが「R-15」のゆえんで、
暴力や殺人、更には最大の禁忌までもが描写され
思わず目をそむけそうになる。


が、次第に明らかになる事実。

どうやら食事は一部の人が暴飲暴食さえしなければ
全ての収監者に行き渡る様、セットされているらしい。

しかし、上の階ほど人々は傲慢になり
下の階のことなど考えず狼藉を尽くす。

明日は自身が空腹を抱えることになるかもしれぬのに
エゴをむき出しにし、利他など考えもせず。

でもこれって、富が極端に偏在する
現在の世界そのものだよね、規模の違いはあれ。

特定の地域では食品ロスが喧伝され、
一方で飢餓に苦しむ場所も在る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


ちょっとネタばれになるんだが
このタワーの最大収容者数は666人になる計算。

ヨハネの黙示録」に記されている「獣の数字」とイコール。
そしてその「獣」とは人間を指し示していたのでは。

加えて「ヨハネ福音書」の一説も引用され
たぶんに宗教的な描写が色濃い。


それ以外の幾つかのエピソードも含め、
キリスト教圏の人は
我々とは違った見方をしてるのだろうなとも思う。

もっとも、その種の下地が無くても、
不条理でありディストピアな世界感は
嫌悪とすれすれの境界で
鑑賞者の感情にぐいぐいと傍若無人に押し入って来る。