封切り初日。
席数284の【CINE5】の入りは一割ちょっと。
まぁ、こんなマイナーな作品は
予告編を見るとか、「IMDb」のレイティングを確認するとか、
評を読んでいるような人しか来ないよねぇ。
ちなみに現時点で、「IMDb」では7.0、
「Metascore」は73なので、なかなかの作品と言えるかも。
原題の「HOYO」はスペイン語で「穴」の意で合ってるかしら。
これは主人公達が隔離される高層塔を
上下に貫く「穴」として示唆される。
その塔に入れられるのは如何なる人々か?
犯罪者もいるようだし、政治・思想犯も居るのかも。
一方で主人公は、ある権利を得るために
自ら望んで収監される。
さて件の「穴」を通して
一日に一度食事が運ばれて来る。
大きな台座に乗り、上から下へと。
見た目も豪奢なそれはしかし、中途補充されることは無い。
上層階の人々にとっては饗宴、
しかし下層に来る頃にはあらかた食べ尽くされ
口に入れるものは皆無な状態。
また食べ物の隠匿にはペナルティがあり、
貯蔵もままならぬ厳格なルール設定。
一つの階に二人の定員は
公平を期すため(?)一ヶ月に一度
相方はそのまま、フロアの総入れ替えをされる。
上層に入ればラッキーも、
下層では地獄図が。
それが「R-15」のゆえんで、
暴力や殺人、更には最大の禁忌までもが描写され
思わず目をそむけそうになる。
が、次第に明らかになる事実。
どうやら食事は一部の人が暴飲暴食さえしなければ
全ての収監者に行き渡る様、セットされているらしい。
しかし、上の階ほど人々は傲慢になり
下の階のことなど考えず狼藉を尽くす。
明日は自身が空腹を抱えることになるかもしれぬのに
エゴをむき出しにし、利他など考えもせず。
でもこれって、富が極端に偏在する
現在の世界そのものだよね、規模の違いはあれ。
特定の地域では食品ロスが喧伝され、
一方で飢餓に苦しむ場所も在る。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
ちょっとネタばれになるんだが
このタワーの最大収容者数は666人になる計算。
「ヨハネの黙示録」に記されている「獣の数字」とイコール。
そしてその「獣」とは人間を指し示していたのでは。
加えて「ヨハネの福音書」の一説も引用され
たぶんに宗教的な描写が色濃い。
それ以外の幾つかのエピソードも含め、
キリスト教圏の人は
我々とは違った見方をしてるのだろうなとも思う。
もっとも、その種の下地が無くても、
不条理でありディストピアな世界感は
嫌悪とすれすれの境界で
鑑賞者の感情にぐいぐいと傍若無人に押し入って来る。