RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アリスのままで@109シネマズ川崎 2015年7月10日(金)

封切り二週目。

席数130の【シアター2】の入りは七割ほど。


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始まりは些細な出来事だった。

それは自分の身に置き換えても
まま あること。

ヒトやモノの名前が出て来ない。
プレゼンの席で ある単語がどうしても言い出せず、
結果、似た様な、回りくどい表現に置き換えてしまう。


主人公『アリス(ジュリアン・ムーア)』の場合は
しかし、次第に、今自分がどこに居るのか判らなくなる
(このシーンの表現は頗る秀逸)、大事な約束を忘れてしまう、
今聞いたばかりの人の名前を忘れてしまう、と
重度が増して来る。

そして、検査の結果は「若年型のアルツハイマー」。
彼女は、そして家族は、次第に自分では無くなって行く『アリス』に
直面することになる。


『アリス』が言語学の教授であることも
悲愴感を増す重要なパーツになっている。

なんとなれば 商売道具の言葉が、
次第に失われていくことのもどかしさ。

なまじ知能が高いだけに、病気の発見が遅れ、
気付いた後では加速度的に進行するように見える。


少なくとも本作は同時代性を持っているわけだから、
キセキの治療が行われることや起きることは
100%無く、で あれば、彼女の行く末は
確実に想定できてしまう、


家族も、彼女に献身的に尽くす。
ましてや夫の『ジョン(アレック・ボールドウィン)』は医者であるだけに、
理性的に、しかし愛情を持ちながら壊れて行く妻に向き合う姿は、
果たして自分だったら、此処までできるんだろうか、と
思わせる態度。
勿論、この一家が、ヘルパーを雇えるほどの
アッパークラスであることも、根底にはあるんだろうけど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


日々退行し、幼児化して行く患者への対応に
正解はないだろう。

ましてや遺伝型のこの病気は
子供が発症する可能性すらある。

それらを全て呑み込んだ上で、
相対する家族の姿は美しく、だから感動を呼ぶのだろう。