RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

蜜蜂と遠雷@109シネマズ川崎 2019年10月10日(木)

封切り七日目。

席数246の【シアター1】の入りは五割ほど。

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ピアノコンクールの決勝に臨む若者達を描いた
1980年の〔コンペティション〕。

ニュースや新聞報道で競技会についての知識は有っても、
その内情を覗き見知ったのは、件の映画が初めて。

音楽好きで、会場にも多く足を運んでいる人でも
出場者の葛藤をリアルに感じるのは難しいだろう。

所謂、内幕ものの、優れたテキストになったのだと評価している。


本作はやはり、日本で開催される国際ピアノコンクールに出場する
主に四人の若者に対象を絞った群像劇。

が、二時間程度の尺の問題もあり、
語られる各人の背景にはかなりの濃淡があり、
それが全体的な平板さの主要因に。


もっとも時間掛けて描写されるのが
復活を目指す嘗ての天才少女『栄伝亜夜(松岡茉優)』。

次いで日々の生活に根差した音楽表現を志す『高島明石(松坂桃李)』。
特に彼はピアノにばかり張り付いている神童達を見返すことを公言し
その言や良し。

そして野生児然としたまさに神童『風間塵(鈴鹿央士)』、
端正な音を紡ぐ『マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)』
となる訳だが、後者になるほど造形表現は淡白に簡略になってしまう。


『亜夜』が再びの輝きを取り戻せるのか、と
果たして誰が勝者になるのか、をサスペンスの主軸に置きながら、
繰り返し出て来るのが世界こそが音楽そのものであるとのテーマ。

おそらくそれを象徴するのが、タイトルにもなっている
かそけき蜜蜂の羽音と、腹にずしりと響く遠雷の重低音。

実は四人共に、純粋培養された天才ではなく、
暮らしの音をきちんと捉え表現することのできる逸材であるわけだが。


ただ、そちらのテーマにしても
くらもちふさこ』が〔いつもポケットにショパン〕で先んじているので
目新しさには欠ける。

多少演奏シーンの時間を削ってでも、
残り二人のバックグラウンドをきちんと語れば
より厚みのある作品に変貌したろうに。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


松岡茉優』が複雑な事情を抱える『亜夜』をまずまず好演。
自信を失ったり、取り戻したりの目まぐるしい変化にも
上手く対応している。

一方で辛いなと思えるのが審査員の『嵯峨』を演じた『斉藤由貴』。
正直、彼女に英語の科白は似合わない。