本日初日。
席数290の【CINE4】の入りは八割ほど。
「バービー!」「ハイ!バービー」と
タイトルにもなっている主人公の名前が連呼される予告編を見ていて、
「おや?!」と記憶を呼び起こす。
『グレタ・ガーウィグ』監督の前々作
『シアーシャ・ローナン』を起用した〔レディ・バード(2017年)〕も
同様な予告編ではなかったか。
「レディ・バード?!」「レディ・バード!」と
ひたすら主人公の(自ら名乗る)二つ名が繰り返される極めてよく似た造り。
日本の配給サイドがどれほどの意識なのかは知らぬが。
とは言え、
〔ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年)〕も含めた最近の三作は
設定は異なるものの、少女の成長譚との共通項。
直近での彼女の関心事なのかもしれない。
冒頭の〔2001年宇宙の旅(1968年)〕のパロディシーンから
既に爆笑もの。
とは言え1959年発売の「バービー人形」が与えた衝撃の
端的な表現にもなっている。
それは「モノリス」に触れるのと同程度の
進化のきっかけへの凄まじいインパクト(笑)。
これにより、少女たちの「お人形さんごっこ」の形式は
がらりと変わったとの。
1983年生まれの監督も、これで遊んだ口なのだろうか。
ただお国がらの違いだなぁと感じるのは
日本の「リカちゃん」が、父親・母親・おじいちゃん・おばあちゃん、と
縦系列の展開もするのに対し、
本家では(永遠の)ボーイフレンド『ケン』や彼女の妹達や友人
或いは社会的ステータスへの派生と
横展開になっているのが特徴か。
本作ではそうした大本の設定を
物語りの核として巧く取り込んでいる。
閉じた「バービーワールド」の中で
十年一日のごとく、変わらぬ「完璧な」日々をおくっている彼女が
変化に気付くきっかけが、
ヒールの上に乗らない足
皮膚の下のセルライト
鬱な気分
なのはなんともおかしい。
それを解決する鍵がリアルな世界にあるらしいと聞いた
主人公の『バービー(マーゴット・ロビー)』は
「空間の裂け目」を通り、人間が住む世界に旅立つ、
たまたま付いて来てしまった『ケン(ライアン・ゴスリング)』を引き連れて。
そこで彼女は今時のアメリカ社会を見、
創造主である「マテル社」の実情(?)に触れるわけだが、
これがまた現実をカリカチュアライズした優れた描写。
「PC」に対するいかがわしい態度や
表面的態度とは異なる本音が言葉の端々に現れ、
観ている側はついつい苦笑い。
マッチョに目覚めた『ケン』の痛い態度を嗤うのは、天に唾するようなものだけど。
現実と虚構が入り交じり、
物語りは大団円に向かうも
一度変化の嵐が吹いた「バービーワールド」は
けして元のままであるハズは無い。
それはラストシーンが端的に示している。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
吹き替え版が上映されている上に
レイティングも付されていない本作。
観客には子供を連れた家族の姿もちらほら。
かなりきわどい表現や科白もあり、
ホントに大丈夫なの?と
老婆心ながら。