封切り四日目。
席数290の【CINE4】の入りは二割ほど。
三十年の出来事を100分ほどの尺に収容。
通常であればメルクマーク的なエピソードを幾つかピックアップ、
時制も考慮しつつ塩梅良く並べて仕立て上げる。
しかし本作の脚本・監督が採ったのは異なるアプローチ。
で、これがなかなかに斬新。
各年の三月の一日だけを取り上げ、
主人公二人のクロニクルを再構成しようとの試み。
元々三月は学生にも社会人にも変化の多い月。
オマケに直近では大規模な災害も起きている訳で。
もっとも物語り世界ではそこそこ異色も
マーケティングの場では結構ありがち。
一例として「博報堂」の〔生活定点〕を挙げておく。
これもたまさか1992年~2018年の
26年分のデータが無償で公開されているわけだが。
なので着眼は中々に素晴らしくも
さて実際の出来はどうか。
幼少の頃はほぼほぼ切り捨てられ、
物語りは高校時代から始まる。
それでも単純に上映時間を割れば
一年当たりの平均はほんの数分。
なので、挿話には軽重を付け
カットバックも効果的に挟みながら
時にモンタージューを併用しテンポ良く観せて行く。
やはり巧いなぁと唸ってしまう組み立て方。
核を成すのは、気持ちや態度、場所や時期の
(古典的な)すれ違い。
なので鑑賞者はかなりやきもきしながらスクリーンを注視する。
余韻の残るラストシーンは、
最初からもっと素直になっていればさ、と
観る側の心にもほろ苦さが去来する。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
多くの作品に出演しながらも
朝ドラの〔あさが来た〕以外はノリきれていなかった『波瑠』が出色の演技。
可愛さから始まって、
中年に掛かろうとする段の気持ちの揺らぎ迄を存分に表現しており
改めて惚れ直す。