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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ノースマン 導かれし復讐者@TOHOシネマズ シャンテ 2023年1月22日(日)

封切り三日目。

席数224の【シャンテ-1】の入りは九割ほど。

 

 

鑑賞前の興味・関心は大きく二つ。

一つは
〔ウィッチ(2015年)〕
ライトハウス(2019年)〕で、
小さな共同体の「内部崩壊」を描いた『ロバート・エガース』が
より大きな(とは言え、実際は縁戚間の諍いだが)スケールの物語りを
どう料理するのか。


もう一つは、
叔父に父を殺され、母は奪われたとの境遇の主人公は
実在したと言われる北欧伝説上の人物
且つ、『シェイクスピア』の〔ハムレット〕の元ネタとも言われるプロット。

類似の設定は
コナン・ザ・グレート(1982年)〕
コナン・ザ・バーバリアン(2011年)〕でもあり
(しかも主人公は何れもマッチョ)、
「コナン」の評価はダメダメな一方、本作が高い理由。

ちなみに鑑賞日時点では、
IMDb:7.1
Metascore:82
と、わけても評論家筋の支持が高め。


筋立ては極めて直線的。

領民にも慕われた(二つ名を持つ)バイキングの王『ホーヴェンディル(イーサン・ホーク )』が
弟の『フィヨルニル(クレス・バング)』に殺され
王権は奪われる。

王子であった『アムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)』は
一旦姿を隠し、身を窶し、復讐の機会を伺う。

神話だけあり、
多くの怪異が主人公を助けた末に悲願は達せられ、
王権は所有者の血筋に戻される。

この世のものならぬ援助が多くあることこそ、
主人公が正統であることの証。


この時代臣下に慕われる要素は、
単純に戦に強いこと。

先の王は多くの町や村を襲い、略奪し、殺害し、焼き尽くし、
生き残りは男も女も奴隷として扱うことが理。

そこには本来であれば多くの怨恨が絡み合うはずも、
王族のそれだけが取り上げられるのは、
本来的には矛盾。

とは言え「英雄譚」なのだから、
致し方はないところか。


一方で、そこに散りばめられた諸々は
血生臭くも美しい。

監督は規模の大小とは関係なく、
持ち前の透徹した映像美で描く。

時としてオペラを観ている感覚にもとらわれ、
なるほどこれは、高評価が得られよう。


また、肉親同士の葛藤や王や王妃の裏の顔も暴き出し
人間ドラマとしても秀逸。

とりわけ王妃の動機は「Frailty, thy name is woman」にも関連し、
主人公の葛藤は「To be, or not to be」に繋がる。

脚本も練り込まれている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


北欧神話だけあり、
ワルキューレ」や「ノルン」「オーディン」等の名称の頻出も特徴的。

それにしても我が国産のゲームやアニメ、コミック、ノベルスは、
こうした出典を良く学んでいるのだな、と
異なる側面でも感心してしまう。