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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

海よりもまだ深く@チネチッタ川崎 2016年5月21日(土)

本日初日。

席数407の【CINE11】の入りは七割ほど。

そのテーマ故か老齢者の比率が高く
加えて夫婦連れと思しき人達が多い。
樹木希林』目当てか。

そんなに集客力のある作品とは思えず
「CX」系列で集中して取り上げられたかな。

挙動を見ていると
普段はあまり映画館に足を運ばない人々のよう。


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2000年以降の多くの『是枝』作品がそうであるように
本作も家族をテーマにしている。

オマケに『樹木希林×阿部寛』の母息子の設定は
歩いても 歩いても〕の時と同様。オマケに
名前までをも踏襲、
加えて父親が直近に亡くなっていることも同じ。

その父親についてだが、一時期
スピルバーグ』が父親不在の家庭ばかりを舞台にしていたけど、
『是枝』監督描くところの父親は、どうも素行が宜しくないケースが大半。


本作の主人公『良多(阿部寛)』も亡くなった父がかなり無頼であったため
反面教師として育って来たのだが、そこは血筋、彼の生き方もそこそこ破天荒。

小さい文学賞を獲ったものの、その後は鳴かず飛ばずの良くある筋立て。
小説を書くための取材の一環と称して探偵事務所に勤めてはいても
調査結果を悪用し相手を脅したり、そして得た金は競輪に注ぎ込んでしまう。

愛想を尽かして子供を連れて出て行った妻には未練たらたら。
しかし、毎月の養育費さえ滞りがちで、果ては一人暮らしの老母の年金にさえ目を付ける始末。


物語は、なにもドラマチックなエピソードが起こるわけでもない。
『良多』と母親や姉、そして元妻と実の息子の
夏の終りの数日間のふれあいが淡々と描写される。

そんなダメダメな彼に対しても
周囲の人々は今でも気遣い、厚情も存在することが
「かるみ」のあるテンポの良い会話と共にしっとりと語られる。

そして、その会話自体も妙に箴言じみたものを多く感じるのも
特徴の一つ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


阿部寛』と『樹木希林』の遣り取りは
最早阿吽の呼吸、ホントの親子かとも思えるほど。

そして、ある瞬間、主人公の顔つきが明らかに変わり、
将来への希望を示唆するシーンがあるのだが、
その時の『阿部寛』の演技も、なかなか見事なもの。